なぜか繁盛する、クリス悩み相談所

 どういうことでしょう。ザンゲ室が、お悩み相談室になってしまいました。


 ご勘弁を。ダイエット失敗主婦だけで、手一杯なんですから。


「夫との関係が、うまくいきません」


「お互いにリスペクトできるところを探して、折り合いをつけてください」


 ふう。これでいいでしょうか?


「チョコをもらえません」


「あなたが誰かに、なにかを差し上げてみてください。ただし、見返りを求めてはいけません。愛されることを求めると、人はどんどん欲しくなって、最終的に寂しい気持ちになります」


 男性からは、非モテを相談されました。他人から愛されるとか、どうでもいいでしょう。自分が感謝していれば。何かを与える人物に、自分がなればいいのです。それだけで世間に貢献しているわけですから、幸福度は上がるでしょう。


「女ですが、女性を好きになってしまいました」


「悩むことはありません。愛の形は人それぞれでしょう?」


 今どき、セクシャルマイノリティもないですね。わたしは愛や恋はわかりませんが、人への感謝として接することは、誰にだってできると信じていますよ。


「シスタークリス、交際してください」


「お引取りください」




 やれやれ、これで終わりですかね?


 疲れました。わたしは占い師ではないのです。そういうのは、ヘルトさんや子爵の仕事だと思いますよ? 


 わたしは、人の悩みにズバリな解決策な言えるほど、人間はできていません。まだまだ修行の身だと、自身では考えています。

 

 ホントにくたびれましたね。こういうときは、誰かにごちそうしてもらわないと、解消できません。


「ありがとうクリス。あなたって、悩み相談の才能があったのね?」


 シスター・エマが、わたしをねぎらってくれました。


「お疲れ様でした。わたしは少し外にヤボ用がありますので」


「あら? 残念ね。これから、バレンタイン料理を食べに行くのだけど」


「なにを、お召し上がりに行くので?」


「お肉よ。チョコレートソースのステーキを、いただくの」


 ほほーう。それは、甘いのでしょうか? ちょっと想像がつきません。


「そうですか。ではホントのヤボ用なので、そっちはキャンセルしますよ」


「いいの? どなたかを待たせているんじゃ……」


「いえいえ。ちょっくらお小遣い稼ぎに、夜の魔物退治をと思いまして」


 ホントは、ラーメンとしゃれこもうと思っていました。



「ならいいわ。ついていらっしゃい」


「ドレスコードは」


「必要ないわ。知り合いのお店だから」


 はて。


 エマには、お肉関係の知り合いがいるのですね。


 まあ、察しはつきますが。

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