フォンダンショコラは、罪の味

 わたしは、海沿いにあるウル王女のカフェに向かいました。


 新メニューが大評判だそうで。


「なんだか、おいしそうなものを開発したそうですね?」


「そうですのよ」


 ウル王女が、自信満々に答えます。


「チョコレートケーキですね?」


 王女が開発した新メニューという割には、オーソドックスな気がしますが……。


「ただのチョコケーキでは、ございませんの。アイスもお付けすることにより、このショコラは真価を発揮致しますの!」


 なんだか、やたら勝ち気なのが気になりますねえ。


 でも、みんなおいしそうに食べています。とはいえ、チョコレートですからね。おいしいのは当たり前ですよ。


「では、いただきましょう」


 わたしは、ケーキにフォークを突き刺して、一口でまるっと。


「ああ、一息に食べてしまったら!」


 これは、罪深うま……!?


「ホ熱チャア! ホ、ホワーッ! ホホホ熱チャ!」


 罪深うまい! けど熱い!


 熱い熱い! チョコレートが、口の中にドロドロと絡みつきます。それが余計に熱い!


「だから申し上げましたのに。まったく、満腹神拳がダダ漏れではありませんか」


 ウル王女が、呆れ果てます。


「満腹神拳とはなんですかホ熱熱熱チャアア……」


 口の中を、ヤケドしました。


 わたしは、アイスで落ち着きを取り戻します。


「ん!? これは、最高に罪深うまい!」


 アイスを口に入れた途端、中のチョコレートが一気に冷えました。パリッとした食感に変わったではありませんか。


「だからみんな、割って食べていたんですね? アイスに混ぜて」


「はい。これぞ我が店の目玉商品、フォンダンショコラですわ!」


 熱ーいチョコレートをココアケーキの中に閉じ込めて、アイスと合わせて出されるそうです。トロトロのままで食べるもよし、アイスと絡ませて固めてから食べるもよし。


 これは、ぜいたくな料理ですねえ。


「なんて料理を、思いついたんですか?」


「以前、シスター・エマとお粥の店に行ったとき、小籠包なる食べ物に出会いまして」


 この人も、あの大酒飲みと一緒になることがあるんですねえ。エマもわたしたちと同じミッション系スクール出身とはいえ、王女とエマの組み合わせなんて見たことがありませんでした。


「二人の語らいなんて、わたしには想像もできませんけど?」


「妹のフレンが、お世話になっていますもの。ごあいさつくらいはねえ」


 そうでしたね。ウル王女の妹を、エマは預かっていたのでした。

 まあ、今はフレンとエマって、ただの飲み友達ですが。


「そのときに食べた小籠包を、参考にいたしましたの」


 ウル王女が、口内炎を見せてくれました。


 あなたも口をヤケドしたんですね……。

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