クリスマスケーキは、罪の味

いちごのショートは、罪の味

 わたしはオカシオ伯爵の経営するオタカフェで、ケーキをごちそうになっています。


クリスマスも、間近に迫ってきました。


「どうクリスちゃん、おいしいかな?」


「はい。とっても」


 伯爵は不安そうに語りかけてきますが、マズイだなんてとんでもありません。


 実に罪深うまい。


 長年わたしは、生クリームの海で泳ぎたいという夢がありました。


 まさか今年の年末に、その願いが叶うとは。


 それくらい、このケーキはおいしいです。


 生クリームのこってりした甘さを、やや酸っぱいめのいちごが引き立ててくれました。舌をクリアにしてくれて、より一層味わい深くしてくれます。


 このいちごは、超当たりですね。


 もちろん、試作品でタダだから、なんて下品な感想ではありません。


「でも無料だなんて。いただいていいんですか?」


「クリスちゃんには、いちご狩りを手伝ってもらったからね」


 そうでした。わたしは、ケーキに使う材料を取ってくるように依頼されたのです。


「他に足りないものなどがあれば、ご用意いたしますが」


「大丈夫だね。どの材料も、クリスマスまでにはもつよ。ありがとう、クリスちゃん」


「では、安心ですね」


 わたしがケーキを再び楽しもうとすると、


「まだよ」


 カレーラス子爵が、首を振りました。手には、カメラを持っています。


「クリスマスといえば、ミニスカサンタでしょうが。もしくは、トナカイの着ぐるみよっ」


 カフェに飾るポスターを撮影すると、カレーラス子爵は言い出しました。


「食べ終わってからでもいいですか?」


「もちろんよ。被写体は逃げないわ」


 たしかに、逃げられそうにもありません。ケーキをごちそうになっていますし。


 食後、わたしをモデルにテーブルで撮影が始まりました。


 衣装は、さきほどのミニスカサンタです。


 といっても、際どい撮影などはしません。


 男性の客層向けに、ちょっとローアングルめなのはあります。ですが、わたしには色気がありませんからね。そこまで需要はありません。


 そういうのはエマやフレン、ソナエさんあたりの役目です。そのうち、彼女たちも呼ばれるでしょう。


「いいわ、クリスちゃん」


「そうですか?」


 わたしなんか撮影しても、たいして面白くはないと思います。体型が中途半端ですからね。腕やお腹にやや筋肉がついていて、幼児体型という感じでもありません。


「あんたはどことなく、オーラが漂っているのよ。アタシは、それを撮っているの」


 自分では、自覚がありませんが。


 それにしても寒いですね。


「ホットココアをいただけますか。足がスースーして」


 冒険者の服装でも、ここまで露出はしません。防寒も整っています。


「ああ、罪深うまい」


 チョコレートを溶かしたココアで暖を取りつつ、撮影を終えました。


 

 さて、二軒目へ行きますかね。

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