お化け屋敷問題、解決
一応確認したところ、寝床はあるそうです。
アンデッドの店長さん及びレジ係のガイコツさんは、不眠でも働けるのだとか。なので部屋がなくても、彼らは問題ないといいます。
「たしかに、あなたのお屋敷の一〇分の一しか敷地はありません。家具も揃え直しになるでしょう。それでも、元はネクロマンサーのお屋敷ですから、それなりです。ご不満ですか?」
「別にいいのよ」
ジターニャさんは、承諾してくださいました。
「ただ、教えてちょうだい。どうしてあたしなの?」
「このお店は、司祭様のはからいで運営できています。彼が常連客だからですが」
ただしそれも、一時的なものでしかありません。
もし頭の固い聖職者が来て、アンデッドが経営している店と判明すれば、司祭様でもかばいきれないでしょう。
ただ、誰か生きている人が滞在していればいいのです。
「でもあたし、お料理のことなんて何もわからないわ」
「わからなくて結構です。ねえ、司祭様?」
わたしは、カウンターの隅で塩焼きそばをおかずにエールを飲んでいるドワーフさんに声をかけました。
彼こそ、司祭様です。
「うむ。飲食店の経営者は、別に調理の資格などなくてよい。家の主であればよいのだ」
自分のおヒゲの上にエールの泡を重ねながら、司祭様はジターニャさんに語りかけました。
「家の、主」
「大将は、お前さんを歓迎すると思うぞよ」
司祭様に励まされて、ジターニャさんが大将に歩み寄ります。
「あの、あたしがここの運営をしてもいいのかしら?」
「助かりまさあ。税金とか、店舗の状態とか、色々困っていたので」
ジターニャさんの顔が、明るくなりました。
「ありがとう大将! じゃあ、ギョーザとチャーハンを、大皿で。小皿もいただけるかしら? お代はあたしが全額出すわ!」
「あいよ!」
大将が、鍋を振り始めます。
数日後、ドワーフの左官屋さんたちが、お屋敷を壊し始めました。
ジターニャさんの姿はありません。
代わりにやってきたのは……。
「まいどー。出前ニャンです!」
大量のチャーハンと塩焼きそばを手に、出前持ちのゴロンさんが差し入れに来ました。
「ああ。ヤムキン様が直に差し入れをくださるとは!」
「屋敷の取り壊しを邪魔した、お詫びだってよ」
「気にしなくていいのに。でも、ありがてえ。おう、たらふく腹に入れて、また本腰入れっぞ!」
ドワーフさんが勇ましい声をあげます。
こちらは、大丈夫ですね。
では、お店の方ものぞいでみましょう。
お品書きが、かわいらしい字に変わっています。わあ。おいしそうなメニューが並んでますね。
カウンターの奥で、ジターニャさんが大将からお料理を習っています。
「おまたせしました。半チャーハンと、サービスで店長自慢のワンタンスープです」
ライスガスキーさんが、わたしに料理を運んでくれました。ライスガスキーさんは、痩せた人間に擬態しています。
「ワンタンスープなんて、できたんですね?」
「本当はギョーザをお出しするおつもりだったのですが」
大量に失敗するので、どうせならスープで出そうとなったそうです。
「いただきます」
では、ワンタンスープから。
ああ。お見事。
(ハロウィン再び編 完)
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