懐かしの、罪の味

 わたしは、路地裏にある大衆食堂へ、ジターニャさんたちを案内しました。



「ああっ。ここは!」


「ゴロンさんとここへ入るのは、懐かしいですね」


 そうです。わたしとゴロンさんを結びつけた、塩焼きそばの美味しいお店です。


「こんな店を知っていたとはねえ」


 店から漂う香りのせいか、ソナエさんもお腹がなりました。さっきまであれだけピザを食べていたのに、です。


「ちょっと、これとアンデッドとどういう関係があるのよ?」


「入ればわかります」


 ガラガラと、引き戸を開けました。


「いらっしゃいませ。ああ、シスター」


「その節はどうも」


 わたしは、大将に一礼をします。


「アンデッド!? 店長が、アンデッドだわ!」


 はい。お店を切り盛りしているのは、アンデッドなのです。


「そうおっしゃるあなたは、ヤムキン家の方で?」


「あたしたちを知っているの?」


「胸のペンダントの由来を知らないアンデッドなんて、いませんぜ。お嬢さんは、名のしれたネクロマンサーの方でしょう?」


 そうでした。この人はかつて、ネクロマンサーによって雑用をさせられていたんでしたね。ネクロマンサーに詳しいわけです。


「あ、コイツはウチの雇われネクロマンサーだった男だわ」


 レジ打ちのガイコツの顔を見ただけで、ジターニャさんは素性がわかってしまいました。さすがですね。


「ではあなた、ヤムキン家にはあまりいい印象を持っていないでしょうね」


「いえいえ。お目にかかれて光栄です。ささ、おかけになってください。何か作りましょう」


 わたしたちは、テーブル席に案内されました。


 ひとまず、塩焼きそばとチャーハンを大皿で。


 ああ、この味です! 罪深うまい!


 懐かしい上に、まったく味が変わっていません。これです。これを食べに来たんですよ、わたしは。


 米はパラッパラなのに、具材がしっとりしていて味が染みています。


 塩焼きそばの方も、野菜のシャキシャキと麺のモチモチのダブルパンチで。


「うん。うん」


 ゴロンさんは、黙々と食べています。会話なんてできないくらい、おいしいんですよ。


「最っ高じゃねえか!」


「実にお見事ですわ!」


 他の二人も、安心して食べ始めました。


「お前さんも食えって」


「では、いただきます」


 みんながおいしそうに食べている姿に、ガマンできなくなったのでしょう。ジターニャさんが、チャーハンをレンゲですくいます。


 よかった。ちゃんと食べてくれましたね。


「うーん! おいっしいわ! なんなの? これが、アンデッドの出す料理なの?」


 口を抑えながら、ジターニャさんはモグモグとチャーハンを咀嚼します。気がつけば、塩焼きそばもモリモリとすすりました。お腹が空いていたんでしょうね。ガリガリでしたもの。


「いやあ、すばらしい料理だったわ。でもシスター、ここにはゴハンを食べに来たわけじゃないでしょ?」


「はい。あなたに、このお店のスポンサーになっていただこうと」


「え?」

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