秋編 ネクロマンサーと、罪なハロウィン

魔王ウルリーカ再び

「ハッピーハロウィンですわ!」


 またやってきましたね、ウル王女が。


「はいはい。どうぞどうぞ」


 ごきげんな魔王に、わたしは教会で配っているクッキーを差し出しました。


「ありがとうございますわ、シスター・クリス。もぐもぐ……」


 ウル王女が、いちごジャムを乗せたクッキーを口へ運びます。すぐに表情が、明るくなりました。


「相変わらず、フレンのクッキーはおいしいですわね。隠し味にお酒が利いていますわ」


 ちなみに、フレンはエマとともに、街にお菓子を配りに行っています。



「すっかり、魔王ウルリーカが板についていますね」


「こなれているとか、それは褒めていますの?」


「まあまあ」


 わたしは去年と同じく、魔王ウル王女に黒いコートを着せました。


「これですわ。これ。この密着感がすばらしいのですわ」


 そうそう、とウル王女が脇へどきます。


「今日は、ゲストもいますのよ。どうぞ」


「邪魔するよ」


 三角巾を頭に結んだ白装束のモンスターが、教会に入ってきました。


 本格的な仮装に、教会にいた子どもたちがびっくりしています。


「ソナエさん、驚かさないでください。子どもたちが怯えています」


「あたしはタッパがあるからな。迫力が違うんだろう」


 ソナエさんにも、クッキーをあげました。


厄払ヤバイな、このクッキー。あたしの故郷には、こんなサクサクで甘いせんべいはないからな」


「そのカッコウも、東洋のモンスターですか?」


「ああ。こっちでいうゴーストだな」


 西洋の魔王が、東洋の幽霊を引き連れています。もはや、なんでもアリですね。


「で、シスター・クリス、なぜ我々がここに来たか、もうおわかりですわね?」


「ええ。いつものデビルクリスになれとおっしゃるのでしょう?」


「それもあるのですが、今回はちょっとワケアリなのです」


 ウル王女が、ちょっとマジメな顔になりました。


「先に着替えましょうか。お話は、それからということで」


「はいはい」


 わたしは、修道服を上に持ち上げます。


「ちょちょっと、クリス! 子供の前で着替えとか!」


「大丈夫です、ソナエさん。下にもう一枚、服を着ていますから」


 呼ばれるとわかっていたので、準備完了なのでした。


「これがデビルクリスか」


 わたしの衣装は、ミニスカートの修道服です。


 インナーの上は、黒い網タイツにしてみました。防寒の魔法もバッチリですよ。


「お腹が空きましたね。では、お菓子をもらいに街へ参りましょう」


「その前に、事情を話しておきますわ」


「……?」


「我々はこれより、本物のお化け退治に向かうのです」

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