土下座の国王様

 ウル王女のお城では、王の間で国王が王妃に土下座していました。


 王妃の横に用意された椅子には、ブスッとした表情のソナエさんが。


 わたしも呼ばれましたが、暴れたら殴っていいと言われていました。


「禁酒中に出歩くなんて、バカじゃないですか! 健康診断で何を言われたのか、今ここでお話してあげましょうか!?」


 そりゃあ、怒りますね。健康のためでしたら。


「だって、ハシオが運営する海の家だぜ? 旨い酒があるに決まってんじゃん! 夏は今しかねえんだ! 旨い酒とつまみなんてあった日には」


 記事によると、『深夜に海の家で、国王らしき人物が巫女と密会!』とすっぱ抜かれてしました。


「それであなたは、黙ってお城を出ていったのですね?」


「うんうん。そのとおり」


 国王は、そう弁解します。


「で、不貞を働こうとしたと」


「とんでもねえ!」


「ですが、こちらの方と、フレンの妹を作ろうと想像したこともないと?」


「当たり前だ! オレが殺されちまう!」


 わたしと牛丼を食べに行ったときと同じことを、国王は言いました。


 どんだけ怖がられてるんですかね、わたしたちは。


「ソナエさま、主人はああ言っていますが、本当にそれ以上のご関係ではないのですね?」


「そうだよ。タダで酒が飲めるって言われたから、ついてきただけだって」


「飲んだお酒のメニューは?」


「たいてい、カクテルだな。あたしはキツイ酒がスキだから、めったにカクテルみたいな甘いのはやらないんだ。スクリュードライバーでさえ、あたしにしたらスポドリだね」


「はい、ありがとうございます」


 ソナエさんに礼を言い、王妃は王に向き直ります。


「あなた、ギルティよ」


 王妃に指摘され、国王がまた土下座をやり直しに。


「女にスクリュードライバーを飲ませるなんて。ヤリチンの手口じゃありませんか」


 仮にも一国のお妃様が、ヤリチンて……。


「誤解だっての! 断じてオレは、やましい理由でソナエを連れ出していない!」


「許してやんなよ。ウルも王妃様も飲めねえっていうから、あたしが呼ばれたんじゃねえか」


「フレンは飲めるじゃないですかっ。行くならフレンと行きなさいよっ。娘なんですから」


 また国王に、王妃は説教をします。たしかに、フレンはシスター・エマに鍛えられてめちゃ飲みます。冷えたエールだけですが。


「オレなんかが誘っても……」


 どんだけ嫌われているんですか、お父さん……。


「そういう不謹慎な行動を取るから、叩かれるのです」


「はい。ごもっともで!」


 王妃の説教に、国王はひれふします。


「それで、深夜に出歩いたのは、ソナエさんとだけではありませんよね?」


「う、それは」


 わたしたちとの牛丼食べ歩きも、バレてるみたいですね……。

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