カロリーネの人脈

 わたしはカウンター席に座って、鉄板焼きを焼いてもらいます。


「焼きそばと、お好み焼きをお願いします」


「どのようにいたしましょう?」


「お好み焼きは、定番の豚玉で。お肉は昨日いただいたので、シーフードを」


 イカ入りの焼きそばを、注文しました。


「承知しました」


 カロリーネさんが、ハチマキをします。本格的ですね。


 鉄板に、豚のバラ肉を焼きます。続いて、小さい器に一人分の生地をスプーンでこね始めました。


「空気を入れるのが、ポイントなのだそうです」


 ほほーお。


「では、参ります」


 混ぜた生地を、鉄板の上へ落とします。


 じゅわああ、と、おいしそうな音が鳴り響きました。音も楽しむのが、鉄板焼ですよね。


 二丁のコテで、カロリーネさんがイカの切り身を焼いていきました。焼きそばの具です。そういえば、彼女は戦闘時も二刀流でしたね。


 ああ、もうこの光景だけでも罪です。ニヤニヤしてしまいますよ。


 カロリーネさんがコテを交互に動かし、イカと野菜を焼いていきます。キャベツにモヤシ、薄切りのニンジンですね。

 もう味が想像できてしまいますよ。


 で、麺に水気を軽く含ませました。またコテが、交互に入っていきます。


「コテさばきが、うまいですねぇ」


 従者とはいえ、カロリーネさんは騎士出身です。お料理がお得意なので驚いたものでした。


「高校当時は、ハシオ先輩にしごいてもらいました」


「ハシオさんと、お知り合いなのですね?」


 なんでも、元騎士団でつながりがあったそうで。ハシオさんが三年のとき、カロリーネさんは一年生だったそうで。


「ミュラーさんも、ご存知なのでは?」


「すいません。男性には、興味がなくて……臨時の先生だったっぽいんですが、覚えていません」


「ああーっ」


 剣術や鉄板焼の技術は、ハシオさんから手際を教わったそうです。それを自己流まで高めて、いつしか先輩を越えてしまったとか。好きは、経験を上回るのですね。


「まさか、二刀流が焼きそばづくりで花咲くとは思いませんでした」


 カロリーネさんは、実に楽しげです。


 話をしているうちに、豚玉がいい香りになってきました。


 豚玉を、カロリーネさんがひっくり返します。


「お好み焼きに、マヨネーズは?」


「お願いします」


 焼きそばにソースをかけて、コテで混ぜ混ぜ。


「目玉焼きを上に添えますか?」


「ぜひ!」


 最後に、目玉焼きを載せてもらいます。


 豚玉も、できあがりました。


 ああもう。この光景が目の前にあるだけで、わたしは幸せですよ。ダメになりそうです。

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