チーズフォンデュは罪の味

 さて、チーズフォンデュを堪能しましょう。


 我々シスターも、チーズくらいは食べます。ですが、これだけ贅沢にチーズを扱う料理は致しません。せいぜい、少量をパンに塗るくらいですね。


 トロトロのチーズに絡ませる具材を選びましょう。


 まずは、プチトマトから。


 木の串に挿して、ちょこんとチーズを絡ませます。赤と黄色のコントラストが見事ですね。では。


「ホ熱ャ!」


 味わう前に、舌をヤケドしてしまいました。


「フフフ。慌てずともチーズフォンデュは逃げませんわ」


 ウル王女が、わたしを笑います。


 そうですね。気がはやりすぎました。


 冷ましてから、口の中へと。


 うん、罪深うまい。


 これはピザですね。口の中で、ピザになりました。

 ピザだとトマトも焼いていますが、これは熱が通っているだけなので中はひんやりですね。酸味とチーズが合いますねえ。


 ブロッコリーも罪深うまい。優勝です。野菜なのに優勝できますよ。


 魚介も行きましょうか。


 さて、エビちゃん。この小エビちゃん、燻製です。魚介は保存を聞かせるために、すべて燻製で持ってこさせたそう。それが吉と出るか凶と出るか。


 ああもう。吉に決まってるじゃないですか。

 大吉ですよ。こんなの。罪深うまくて当然です。

 燻製味なので、コショウも何もいりません。これは最強ですね。


 ホタテも、絶妙な罪深うまさです。


「ホア、ほ、ホ熱ャ……」


 ホフホフと言わせながら、わたしは大型のホタテをまるごと口へ放り込みました。


「もう、あなたって意地汚いんですから」

「この味わいには、抗えませんよ」


 なんといっても、罪深うまい! 強烈なうま味です。魚介の鮮度と、樹木のエキスが見事に混ざり合っていますね。海と山ががっしりと握手をしています。


 お肉もいただきましょう。


 チーズに合うと言えば、唐揚げです。しかも、骨付き。これを先端だけチーズと絡めて……。


「オフォフォ……罪深うますぎます!」


 チーズと鶏肉が……これはこれは。語彙力がヤケドしました。罪が罪でコーティングされています。


 国王側の席は、ローストビーフですって。なんとも、贅沢な味わいでしょう。


 こちらにも、一部分けていただきます。お礼に唐揚げを。


 ソースのかかった牛肉を、チーズへトロンと。


「は、は、はっ。罪深うまい!」


 胃袋の中で、牛肉が踊っています。熱いですね。灼熱のダンスを踊っていますよ。うわあ。チーズと合わせると、こうなっちゃうんですか。見事なポテンシャルでした。


 最後に、ポーク。チーズをソーセージですくって、と。


 ああ、パリッという皮の音まで罪深うまい。言葉がありません。このパリッだけで、生きててよかったと思えますよ。そこへチーズが混ざるという至福。


「ごちそ」

「シメはリゾットとパスタがありますわよ?」

「両方いただきます」


 パスタは、以前に魔王ルーク・オールドマン侯爵のところで食べました。こちらのパスタも、見事ですね。パスタをチーズと一緒に吸っているだけで、幸せです。


 あとはリゾットです。炊いたお米を使っているので、正確には「おかゆ」なのだそうですが、関係ありません。


「あったまります。罪深うまい」


 チーズの濃厚さと、お米の甘さとが、最高にマッチしますね。


 パスタにはパスタの、お米にはお米の良さがあると知りました。


 まるで王族と、城から出てシスターになったフレンを見ているようです。


「ごちそうさまでした」

「私も、ごちそうさまでした。お父様」


 フレンも、満足げです。


「いつでも帰ってきなさい。ここは、お前の家だ。なんの気兼ねをすることはないのだよ」


 国王も、フレンを優しく見送りました。

 

 家族って、まるでお鍋みたいですね。


 それぞれの家族、それぞれのコミュニティに、鍋があるのでしょう。


 

(第三部 完)

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