フードテーマパークは、罪にあふれている ~フードテーマパークで食ざんまい~

フードテーマパークで、ヒーローショー

 建設予定の遊園地にて、わたしたちシスターは園児向けのお芝居をすることになりました。


 モーリッツさんが設立を予定しているのは、『食育』のテーマパークです。食べ物の歴史や流通の仕組みを学びつつ、お腹いっぱいになってもらおうというコンセプトだそうで。


 最高しかないですね。てっきり、水族館や遊園地などを連想していましたが。


 我々シスターたちの役割は、そのオープンセレモニーです。


 お芝居は、子どもたちの意見を取り入れて、ヒーローショーとなりました。


 といっても、英雄譚のようなガッツリ本格的なものではありません。


「東洋の料理を我が国に運んできた女傑」という出し物だそうで、メインは旅行記です。女性の社会進出も表現できて、いいだろうとのこと。


 男子児童から不満の声が上がるも、「衣装がミニスカでセクシー」というので採用となりました。子どもといえど、男の子って正直で現金ですねぇ。実にわかりやすい。


 しかも原作は、ウル王女お墨付きの女優ポーリーヌさんを排出したクッタノ監督です。監督が作ったドキュメンタリー作品を、子どもでもわかりやすくしたものだとか。これは期待できますね。


「では、配役を決定したいと思います」


 シスター・エンシェントによる司会で、それぞれの役を決定していきます。


 主人公の女傑は、フレンで決定しました。満場一致です。幼い彼女の顔立ちに豪快な女傑を演じさせれば、ギャップ萌え間違いなしとのこと。


 その母親役は、エマです。わかりやすいですね。


 他のシスターたちも、次々と配役が決まっていきます。裏方の子たちと、お芝居をする子たちに分かれて作業が始まりました。



 ですが、問題が。

 わたしだけ、なんの役割ももらえていません。


「あのー。わたしは、何をすれば?」

「シスター・クリス。あなたは、食べ物につられて進行を務める、司会のお姉さん役です」

「やっす」


 以前も、ウル王女に言われましたね。


「悲観なさらないでください。あなたは重要な役割なのですから」


 話の全体を見る必要があり、トラブルが起きたら即対応せよとのこと。


「責任重大じゃないですか!?」

「ありとあらゆるトラブルに対処できるなんて、あなたくらいですからね。私は、裏方で忙しいです。特に子どもたちの警備、安全確保が最優先ですからね」


 たしかに、わたしは冒険者もやっていますからね。荒ごとは、任せていただければいいですが。


「わたしは、舞台に立たなくてもいいと?」

「あなたにお芝居なんて、期待していません。感情が、すぐ顔に出ますからね」


 おっしゃるとおりで。


「そのかわり、ちゃんと働いていただきますから。特に舞台上でのトラブルに対処してください」

「なにかあるんですね?」

「ウル王女が、敵のボス役として出演が決まっています」


 あらまぁ。


「王女が言い出したので?」


 姉妹共演は、たしかにアツいですが。


「いえ。国の方針だとかで」


 公務ですか。なおさら重要性がアップしてしまいました。


「サポートとして、ポーリーヌさんが副官として側にいてくれています。ですが、フレンが気を遣ってしまう危険が」


 なるほど。


「それと、あなたを司会に任命したのは私ではありません。モーリッツ氏です」


 エンシェントが、意外な言葉を口にします。


「モーリッツさんが? どうして?」

「あのテーマパークができたのは、あなたのおかげだと」

「ほほう」


 わたしがサジーナさんに食育をしたのをハシオさんから聞いて、テーマパークのコンセプトを決めたとか。


「あなたにとっては、取るに足らないことかもしれません。が、ちょっとしたことでも、誰かの役に立つのです」

「そうだったんですね。わかりました。お役に立ってみせます」

「その調子ですよ、クリス」

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