お子様ランチの罪を確認

 お夕飯は、外で食べることになりました。

 わたしも、同行します。


「おやさいたべて、いいこにしてたー」

「はい。いいこだったっす。今日は特によかったっすね」

「わーい」


 ハシオさんに褒められて、サジーナさんも気を良くしました。


「ここっすよ」


 訪れたのは、小綺麗な洋食店です。


 ここが、ファミレスですか。なんともファンシーですね。


 普通の洋食屋だと、もっと上品な感じで、初見は入りづらい印象がありますが。


 気取ったり飾ったりしていない、実に親しみやすい場所かと。


 わたしたちは、窓際に着席します。


 お子様ランチを頼むお客さんが、多いですね。ご両親の方は、ミックスフライ定食を頼んでいます。


「あれが、お子様ランチですか」


 ドーム型に設置されたオムライス、同じくケチャップ味のパスタ、ハンバーグにエビフライですか。おやつにプリンがありますね。


 主婦っぽい中年のウエイトレスさんが、オーダーを聞きに来ました。


「お子様ランチをひとつ。オイラは生ビールと、ミックスフライ定食のライス抜きを」


 ハシオさんが、注文します。


「ランチ」といっても、お昼だけのメニューではないようです。

「定食」という意味で、捉えているのでしょう。


「かしこまりました。そちらは?」

「あの、わたしもお子様ランチというものを食べてみたいのですが」

「申し訳ございません。一〇歳以上の方にはお出しできませんので」

「似たような定食は、ございますでしょうか?」


 なんとか、粘ってみます。


「同じようなメニューですと、ハンバーグ定食か、ミックスフライ定食となりますが」


 ウエイトレスさんが、教えてくれました。


 よく見ると、たしかにミックスフライ定食によく似ています。子どもがお子様ランチを、大人になると名称が変わるのでしょうか?


 お野菜として、お子様ランチにはポテサラが用意されています。ミックスフライ定食となると、別皿でサラダがつくんですね。こちらのポテサラは、一口サイズです。


 それにして、エビフライが大きいですね。


 だからハシオさんは、ミックスフライの方にしたんでしょう。ごはん抜きをチョイスされるとは、さすがお酒飲みです。


「わたしも、ミックスフライを」

「かしこまりました。まずはサラダをお持ちいたします」

「お願いします」


 しばらくすると、お子様ランチとセットのサラダが来ました。スープまでついています。

 わたしとサジーナさんは、コーン味を選びました。

 ハシオさんは、コンソメ味です。


 三人で、「いただきます」と手を合わせました。 

「うん、罪深うまい」


 一口目から、心を奪われます。

 コーンのツブツブを噛みしめるだけで、癒やされますね。


 サラダには、乾燥パンが散りばめられています。

 カリカリで、罪深うまい。


 千切りキャベツとシャキシャキレタスが、ポテサラと融合してなんとも言えません。なんて、新鮮な味わいでしょう。ドレッシングのおかげですね。ゴマがきいていて、食べごたえがありました。


 でもやっぱり、主役はパセリです。

 

 ああああああ、罪深うまい。

 ツーンとした風味が、鼻に抜けていきます。


「シスターは、パセリ好き?」

「はい。パセリのサッパリさがあるとないとでは、定食の味わいに物足りなさがありますよ」

「そうなんだ」


 サジーナさんを見ると、ちゃんとポテサラも食べていますね。パセリには、手を出していません。


「ムリして食べる必要は、ありません」


 食育でのタブーは、ムリヤリ食べさせることです。自主的に動くように仕向けないと、苦手意識が強まりますからね。


「ううん。おいしそうだから、食べてみる」

「では、ドレッシングをたっぷり付けたほうがいいですね」


 わたしも、ゴマドレッシングを大量につけたパセリが最高に好きなのです。


 サジーナさんが、パセリを一口でパクリとしました。


「うーん、やっぱり苦い。でも、ポテサラのクドさは抜けたかも」

「よかったです」


 こうやって、少しでも苦手が克服できればいいですね。


「おまたせしました。ミックスフライ定食です」


 ああ、茶色とうとい夕飯がお見えになりましたよ。

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