オトナの女がお子様ランチを食べるのは、罪ですか? ~ファミレスのエビフライ定食~

ファミリーレストラン

「また、ダイエットに失敗しまして」


 ごきげんよう。シスタークリスです。


 はい。またですよ。またダイエット失敗主婦さんです。もう常連さんですね。


「詳しくお聞かせください」

「実は、家族で【ファミレス】なるお店に入ったんです」

「ファミレスとは?」


 聞いたことがないお店ですね。


「ファミリーレストランの略でして」


 普通の洋食店や喫茶店より、やや安価なメニューを出すそうです。その分、味は専門的ではないそうですが。


「なるほど。それから?」

「家族で食べに行ったんです。まあ、私はダイエット中だからサラダ食ってりゃいいやって感じで」

「はいはい」


 しかし、息子さんの食べ残しを旦那さんと一緒に食べる羽目になったそうで。


「【お子様ランチ】っていうんですけどね」


 なんだか、背徳的な響きですね。お子様限定のランチとは。


「どのような料理なのでしょう?」

「お子様ランチっつっても、フタを開けたらミックスフライ定食ですね」


 ケチャップで絡めたパスタと、一口大のハンバーグ、スプーンサイズのピラフに、ミックスフライ、デザートにプリンがあるそうです。

 これは、罪深うまさ目白押しですね。聞いただけでも、ヨダレが出そうです。


「息子は夫に似て、食が細くて。ハンバーグとケチャップパスタを食ったら、腹一杯になってしまったんですよ」


 なんと、もったいない。


「ミックスフライが絶品でして。中でもエビフライが、これまたうまくてですね」

「お酒に合ったと」

「ええ」


 まったく否定しません。この方はダイエットより、禁酒なされたほうがよろしいと思うのですが。


 お酒に合うお子様ランチっていうのも、どうかと思うのですが。最近の成人は、子ども用のお菓子を肴にお酒を飲むそうですけれど。


「安物の料理だと高をくくっておったんですよ。ところが、これが最高の味でして。ああ、アジフライもありました」


 そんなオヤジギャグはいらないんですよ。続けなさい。と心で毒づきます。


「とにかく、お子様ランチはオトナでも全然楽しめる料理でした」


 なるほど。それは子どもだけに占領させるのはもったいないと。


「おやつのプリンまで食べちゃいました」


 ダメじゃん。

 それは子どもにあげなさいよ。


 ただし、おまけでおもちゃが付いているとか。子どもしか頼めないものだそうです。


「おもちゃとはなんですか?」

「木彫りの『カピくん』です。四足動物なのに二本足で歩くゆるキャラでして」


 主婦さんが、絵を見せてくれました。サロペットジーンズ、つまりオーバーオールを着たカピバラさんですね。


「以前、動物園でカピバラと温泉に入って気に入ったらしくて」


 なるほど。とすると、わたしは主婦さんのお子さんと会っている可能性はありますね。


 息子さんはおもちゃだけが目当てだったらしく、完食するつもりはなかったのだとか。


 実にもったいないですね。この世界は、おいしいもので溢れているというのに。


「わかりました。調査して参ります」

「ありがたき幸せ」


 とはいえ、いかがしましょう。

 子どもの知り合いなんて……いましたね。


「ミュラーさんミュラーさん、ちょっとばかり」


 昼食がてら、わたしは冒険者の服装に着替えて街へ。ギルドの酒場へ行きます。


「どうした、嬢ちゃん?」

「お嬢さんをお借りしたいのですが?」

「娘のホリーをかい? どうしてまた?」

「実は、今度児童向けの演劇をすることになりまして。お嬢さんのご意見を伺いたく」


 お子様ランチが食べたいから、同行してくれとはいえず。


「あー、タイミングが悪かったな。すまんが、家にいないんだよ」


 なんでも、今度から通う学校の見学に行っているそうで。


「そうだ。子どもと言えば、ハシオが困っていたな。そっちに行ってやってくれ」

「どうかなさって?」

「ハシオのやつ、姪っ子の面倒を見させられているそうなんだ」

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