煮込みハンバーグは、罪の味

 うーん、ライスに合うシチューは難航していますねぇ。

 これは、外部の知恵を頼るに限ります。

 ただ、ライバル店なんですよねぇ。


 向かうは、ウル王女が運営するオープンカフェです。


「ふむふむ」


 が、ウル王女の方も頭を抱えている模様でして。


「どうなさいました?」

「新メニューの開発をしているのですが、思った通りの味が出せませんの」

「たとえば?」

「要望は、パンにもライスにも合う肉料理です。がっつりしたメニューがほしいとのことでして」


 ウル王女のお店でも、同じようなメニューを考えていました。


「こちらなんですけど」


 わたしの前に出てきたのは、ハンバーグです。 


「煮込みハンバーグですわ。野菜や果物をベースにしたソースを使い、煮込んでお出しするのです」

「おいしそうですね」


 手が込んでいますね。これはたしかにおいしいでしょう。


「召し上がってみてください」

「はい。いただきます……っ!」


 絶対に罪深うまい。


 完全無欠ですよ。この味は。パンもライスも、両方欲しいです。


「ん? でも。デミグラスソースではないんですね? ケチャップの味がします」


 ハンバーグと言えば、デミグラスソースというイメージでしたが。


「はい。とんかつに使う熟成ソースと、トマトケチャップで煮込みましたの」


 だから、味が強いんですね。


「このソース、単体だとすごく濃くてクドいです。けど、お肉とカラメルと絶妙な味わいになりますね。スパイシーになるといいますか」


 デミグラスだと甘くなるところを、やや酸味が強くなっていました。


「そうなんですの。はじめからお肉と合わせるために作ったソースですから」


 なるほど。それはゴハンが進んじゃうやつですね。


 ライスを注文しました。ここからは、ガツガツいただきましょう。


「ほんと、気持ちいいくらいによく食べますわね、あなたは」

「それが生きがいですから。うん、これは間違いありませんね」


 やはりライスに合います。


 これは、ヒントになるかもしれません。


「ただ、『牛肉の赤ワイン煮込み』も捨てがたく、という意見もございますの。赤ワイン仕立てのデミグラスソースは、ウチでも人気でして」


 たしかに、煮込みハンバーグは庶民的な味ですね。

 牛肉の煮込みにすると、ある一定の貴族にも受けそうです。

 が、お値段が跳ね上がってしまいますね。


「そちらの方も、お安く仕上げられないかと」

「では、シチューにしてみたらいかがでしょう?」


 お野菜も具として添えれば、コストも抑えられる上にお腹も膨れましょう。


「なるほど。ビーフシチューですね。ならば、デミグラスソースが活きます」

「それに」

「ええ。絶対に間違いなく、おいしいですわよ」

 


 翌日、わたしはまた呼び出されました。ビーフシチューの試作品をいただきます。


 真っ黒なシチューは、茶色い神を信仰するわたしですら魅了しますね。


「ああ、罪深うまい!」


 このコク、旨味、どれをとっても最高ですよ。

 お野菜とのバランスも見事ですねぇ。


 牛肉もいただきまして。


「……罪深うまい」


 思わず、ため息が漏れます。デミグラスとお肉の相性が、抜群ですね。


 これは高級品としても、庶民的な味としても、お出しできますよ。


 添えてあるのはパンですが、この料理はライスでお迎えするのもアリな料理です。


「すいません、ライスを」


 わたしは、ライスを用意していただきました。


 ウル王女は、当たり前のようにライスを出してきます。


 そういえばウル王女の妹であるフレンも、シチューライス許容派でしたっけ。


 さすが姉妹です。


「いただきますね……はい。罪深うまいです!」


 やはり、間違いありませんでした。

 ポイントは、主役のお肉ですね。

 ライスと肉があわないわけがないんですよ。


 やはりシチューはライスとも相性が……。


「これですよ!」


 わたしは、ひらめきました。

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