いやあ。ポップコーンって、ホントに罪深《うま》いですねえ

 死んだ大富豪の遺族が遺産相続でモメているとき、戦地から長男が帰ってきたところから始まります。


 いつの時代でも、遺産争いはめんどうくさいですね。

 作中の人物たちも、遺産を当てにしています。

 事業に失敗した次男は特に。


 遊んでばかりの三男は、完全に遺産目当てです。


 学者をしている四男は、遺産を当てにしていませんでした。

 けれど、妻が浮気をしていて、彼に貢ぐために金を求めてきます。


 つましい生活が好きなメイドも、遺産に興味がありません。

 事件はこのメイドが軸になります。


 お、第一被害者が。

 長男が崖から突き落とされて、足だけ出ている死体で発見されましたよ。


 ウル王女が、青ざめています。


 来ました。名探偵が活動を開始しましたよ。


 この人、ことあるごとに何か食べていますね。


「知恵を使うと、甘いものが欲しくなるんだよ」、ですか。


 おお、わたしとしたことが。映画に見とれて、本来の目的を忘れるところでした。


 ポップコーンをひとくち、いただきます。

 

 いやあ。ポップコーンって、ホントに罪深うまいですよね。


 ポップコーンがどうして人々を魅了するのか、謎が解けた気がします。


 なんでしょう、この塩加減。

 バターの風味も、味わい深い。

 独特の濃い香りで、暗いところで食べても存在感を失いません。

 案外、音が出ないのもいいですね。

 サクサクという咀嚼音以外、たいして気になりません。

 自分だけが、音色を楽しめるなんて。


 これは夢中になっちゃいますよ。


 で、コーラです。

 ううん、素晴らしい組み合わせですね。

 しょっぱい口の中を、シュワシュワが洗い流してくれます。

 それでいて、ケンカをしません。


 これだけ調和が取れていたならば、映画の中の一族も遺産などというくだらない価値観に振り回されることもなかったでしょうに。


 探偵さんは、事件を解決するために奔走していました。


 にもかかわらず、相続人たちは次々と謎の死を遂げます。


 そこでなんと、メイドも大富豪と血縁関係にあったことが判明しました!


 遺産相続人の候補となったのは、よかったです。

 不遇な人生でしたからね。

 が、同時に重要参考人として疑われることに。


 なにが「よし、わかった」ですかバカ刑事。


 高所が苦手なメイドさんに長男を崖から突き落とすなんて不可能でしょうに。

 冷静に考えたらわかるでしょうよ。


 おお、わたしとしたことが。

 ワサビのり味を試すのを忘れていたではありませんか。

 それだけ、夢中になっていたということでしょう。


 いけません。本来の目的は、ポップコーンを食べること。

 これはむしろ、わたしに課せられた使命ですね。


 ああ、ワサビ味も最高です。

 ノリとの相性もバツグンですよ。

 これはコーラが進んで仕方がない。


 映画も佳境に入ってきましたね。


 なるほど、犯人は長男の妻でしたか。

 ほほう。

 戦地から帰ってきた人物は、兄に似せた偽物だったと妻は気づいていました。


 その男も正当な後継者でしたが、妾の子だったので散々な目にあったと。


 長男と瓜二つだったのをいいことに、男はこの一族に取り入ろうとしたいたのですね。


 でも、自分は相続する気がありませんでした。

 自分の妹、つまりメイドさんにすべて相続させることだったのです!


 長男の妻は、それを許せませんでした。

 元々ほかの相続人も殺す予定だったのが、長男に化けた妾の子から殺すことになったと。


 名探偵はその矛盾をついて、事件を解決に導きました。


 しかし、長男の妻は警察の目を盗んで自ら毒を飲んで死にます。


 遺産はメイドさんの手に。

 が、幼少期にお世話になった児童福祉施設に全額を寄付します。


 なんとも、ワサビのように泣ける結末ですね。


 わかったことが、たったひとつあります。


 いやあ、ポップコーンって、ホントに罪深うまいものだったのですね。

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