感想会で食べるお菓子は、罪の味

 スタッフロールが流れる中、わたしはポップコーンの残りを口へ流し込みました。

 最高ですね。ポテチとはまた違った趣がありますよ。


 昼食に、レストランへ向かいます。

 ちょうどお昼を過ぎた辺りですから、空いていますね。

 ついでにお腹も減っていました。


「王女。あそこ、いいじゃないですか。あっちへ行きましょう」


 映画館の近くに、フードコートを見つけます。


 子ども向け映画を見終わったキッズたちが、親と一緒にごはんタイムをしていました。

 テーブルにおもちゃが大量にありますね。売店で買ったのでしょう。


 そこで、軽めの昼食を取ります。


 ツナとほうれん草のクリームパスタをいただきましょう。

 スープは、コンソメ味にします。


 ああ、罪深うまい。


 間違いないです。

 こういうところのパスタって、たまんないんですよ。

 適度にさっぱりめで。

 クリームが強くて、やや味は濃いめです。

 が、今はちょうどいいですね。


おいしいですわね。こういう場所で大正解でした」


 ウル王女も、ハンバーグ入りサンドイッチと、比較的軽い感じです。

 いつものお肉をガッツリ、と思ったのですが。


「ポップコーンが響いていますね」

「はい」


 王女が、正直に話しました。


「Sサイズにして、正解でしたわ。お腹の持ちはいいのです。けれど、味が濃くて」


 同感です。少し舌を休めたいですね。


「それはそうと」


 わたしは、カバンからお菓子の詰まった袋を取り出します。


「ええ。食べそびれましたね」


 せっかく買った量り売りお菓子を、食べ損ねてしまいました。

 わたしとしたことが。

 ポップコーンに気を取られすぎてしまうとは。


「実はわたくしも、ポップコーンが甘くて、ちょっと他のおやつに手が伸びませんでしたわ」

「ですよね」


 結構なボリュームでした。

 昼食も考えていたので、セーブしていたのですが。


「ここで食べちゃいましょう。カフェオレと一緒に」

「ですわね」


 カフェオレを飲みながら、お菓子は食後のデザートにしました。


 うんうん、罪深うまい。


 誰がなんと言おうとおいしいです。

 ザッツ駄菓子ですが、これがいい。

 これぞ映画館のおやつですよ。量もちょうどいいですね。


「では、感想会と行きましょうか」


 二人でお菓子をつまみながら、語り合います。


「いやあ、名推理でしたわ」


 感動したような表情を浮かべながら、王女がラムネを口へ放り込みました。


「どうでしょう? あの人、本当に名探偵なのですかね?」

 

 言いながら、ソフトキャンディを食べます。


 だって、事件を未然に防ぐのが探偵の役割のはずでしょ?

 相続人はメイドさんを除いて全滅していますから、解決というより「真相にたどり着いた」といえるでしょう。


「身も蓋もない言い方ですわね」


 ウル王女が、アツアツのカフェオレへマシュマロを沈めます。


 いいですね。おいしそうです。わたしも今度試しましょう。


「でも、引き込まれましたね」

「あなたは、ポップコーンの消費に夢中になっている風にしか見えませんでしたわ」


 それは事実ですが。


「いえいえ。ちゃんと映像に集中していましたよ。ヒロインであるメイド役の女優さんが、素朴なのにキレイでした」

「そ、そうですの」


 王女の顔が、引きつっています。


「ま、まあ、あなたにとって映画ってそういうものでしょう」


 随分な言い方ですね。


「そこで、提案なのですが」

「なんでしょう、クリスさん?」

「もう一本見ましょう」


 今見ると、少々がっついているように思われてしまいます。

 少しお腹を落ち着かせ、おやつの時間ついでに映画を楽しもうではありませんか。


「幸い、わたしも今日はチートデイです。時間はありますよ」

「わたくしも、門限に帰っていればいいですから。ところで、映画は何にしますか?」

「もちろん、あなたが見たがっていた映画に決まっています」



 わたしは、子ども向け探偵アニメを差しました。



「そんなこと、わたくし一言も」

「いいから、いいから」


 ウル王女の手を引いて、チケットを買います。

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