塩ダレは、罪な争いをなくす
グレープフルーツジュースのおかわりも頼んで、わたしはオーダーを終えます。
「あんた、通ね。塩ダレなんて」
「その発想は、ありませんでした」
エマもフレンも、わたしのアイデアに乗りました。
まあ、これはソナエさんの受け売りなんですけれど。
以前にソナエさんと炭火焼き鳥をしたとき、思いついたのでした。
いつかお店でも食べてみたい、と。
あっ、そのときも「身を串から外すんじゃねえ」って怒られましたっけ。
ホントに串焼きガチ勢って、めんどくさいですね。
「おまたせしました。塩ダレです」
「ありがとうございます。では、いただきましょう」
三人で、塩ダレの焼き鳥をいただくことにします。
これは、
冗談抜きのおいしさです。
塩のさっぱりさと、タレの濃厚さが組み合わさって最強になりました。
それでいて、新しい味を提供してくれます。
なんといっても、コメ!
タレとはまた違った、コメとのハーモニーを演出してくれました。
「これはおいしいわ!」
「はい。お酒との相性も抜群ですね!」
二人の、エールを煽る手が止まりません。
わたしは、なんという罪の道へと導いてしまったのでしょう。
神よお許しを。咎人を生み出してしまうとは。
「フレン、ごめんなさい。なんだか、すごく小さなことで、いさかいを起こしていたみたいだわ」
「私の方こそ、申し訳ありませんでした。塩には塩の、タレにはタレの良さがあるのですね」
そのとおりです。わたしの方が、それに気づくことができました。
これは、二人に感謝ですね。
「おまたせしました。シメの塩ラーメンです」
来た来た、来ましたよ。
焼き鳥屋の最後を飾るのは、ラーメンです。
「これも塩ダレ味なのね! とってもおいしいわ!」
エマは、お酒のシメに再びお酒を飲んでいました。
仕方ないですね。罪人なんですもの。
「お肉が鴨なんですね! やわらかいです! これは、お酒が欲しくなりますね! ああ、シメなのにまたお酒を……」
ですよね。罪の味ですもの。
ああ、この鴨ラーメン、脂のノリがちょうどいいです。最高ですね。
「デザートでシメましょうか」
「そうね!」
三人で、アイスクリームを食べて終わりました。
「はーあ。クリス、ありがとう。ごちそうさま」
「ごちそうさまでした、クリス先輩! また遊んでください!」
二人が、わたしにお礼を言ってくれましたが、わたしは首を振ります。
「何もしていませんよ、わたしは。だって、二人はとっくに仲良しではありませんか」
わたしが言うと、二人は見つめ合います。
「串からお肉を外そうとすると止めたし、同じタイミングでお酒を求めていました。これは、二人は通じ合っている証です。お二人は、お互いの関係を再確認したに過ぎません」
最初から、二人はいがみ合ってなんかいませんでした。
仲良し同士が、さらに絆を深め合っただけ。
わたしは単に、お手伝いをしたに過ぎないのです。
「でも、あんたがあたしたちを見守ってくれたことは事実だわ」
「そうですよ、クリス先輩。ですから、今度は私たちの番ですよ」
では、二人からのごちそうを楽しみにしていましょう。
五人分の胃袋を、どうやって満たしてくれますでしょうね。
次のチートデイを迎えました。
わたしは、テーブルを覆い尽くすほどの山盛りトマトソースのパスタを頬張っています。
「何を食べてもいい」と言うので、一度やってみたかった「飲食店 全メニュー制覇」にチャレンジしていました。
このパスタは、店中のパスタを全部混ぜたものです。
「クリス、さすがにヤバいわ」
早くも、エマは泣き言を言いました。
「ですね。もう手持ちが」
お財布を覗き込みながら、フレンがため息を漏らします。
「何を言いますか。これからですよ」
口をケチャップまみれにしながら、わたしは二人に告げました。
パスタ完了です。
あと、デザート七品で制覇ですね。
(焼き鳥編 完)
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