第15話

「お前が全部やったのか!ティッキーのことも……!」

メルヴィルがスタンの方に走る。

「ティッキー?その方のことは知りませんが、……この関係ですか?」

スタンが袋に入った砂を見せる。ティッキーが撒いていた砂だ。

「っ……!てめぇか!!」

「許さないわ!!」

アンジェが外に待機させていたキャロリンに乗り、矢を飛ばす。

「ティッキーの仇だ!!」

ベノワットとリヒターも武器を構える。


【戦闘開始】


【勝利条件・敵将の撃破】

【敗北条件・味方の全滅】


今回は特殊会話あります


メルヴィルとの会話

メルヴィル「あの街で砂を撒いたのはお前か!」

スタン「ふふふ、どうせなら髪の毛一本でも落としておけば良かったですね。そうすればもっと兄様に疑いが行っていたでしょうに……」

メルヴィル「誰がやっていようと同じだ!ここでお前を殺してティッキーの無念を晴らす!」


アレストとの会話

アレスト「残念だねェ……あんたとは仲良く出来そうだと思ったが」

スタン「ふん、あなたは兄様の味方だったのでしょう。私の事は最初から疑っていた。……違いますか?」

アレスト「アントワーヌは俺と同じだと思ったから味方したのさ。……ま、同じにしたのはあんただったようだが」



【戦闘終了】


スタンが傷を負った腕を抱えてアレストたちから距離を取る。

「あんたを生かしておく理由はない、と言いたいところだが。1つ聞きたいことがある」

「……」

「狙いはアントワーヌか?」

「……そうですよ。私はあの兄が憎かった!!それだけです……!」

アレストが腕を下ろす。

「私が王になりたかった!お父様も、レモーネ様も……兄様ばかり!!」

護衛されていたアントワーヌが顔を上げる。

「あなた方は私のことを自分勝手だと笑うでしょうね。しかし、この長い国の歴史に名を残せるのは王だけなのです!!私は兄様よりもずっと王になりたかった!!私が王になるためなら、なんだってしたいと思った!父も兄もいらない!!」

国王を暗殺したのもスタンだった。ルイスは息をのむ。

「……国王暗殺前から砂を撒いてシャフマの村を襲ったのか」

メルヴィルが氷のように冷たく言う。

「それは知りません。私はアレスト王子が兄様の味方だと思ったから、あの砂を撒いただけです」

(やはりな……こいつは本命じゃない)

アレストが腕に魔力を溜める。

「ふふふ……いいですね。あなたは何人殺そうとも英雄と言われる王になれる。心底羨ましいですよ」

「……」

「俺が英雄に見えるかよ」

アレストの瞳が揺れる。英雄……そんな呼び名はいらない。


「メルヴィル」

掠れた声で呼ぶ。メルヴィルが勢いをつけてスタンの胸に剣を突き立てた。刺す。何度も、何度も。

「……すまない」

振り返ると、大きな目に涙をためたアントワーヌがいた。

「ボクは弟の本心を聞いても、彼を許すことはできない……」

「アントワーヌ……」

「ボクは王だからだ。たとえ自分の弟でも、王を……そして国民を脅かす存在は許しておけない。アレスト、ボクは間違っているだろうか」

「間違ってなんかいないさ。俺も同じ気持ちだぜ。もし俺があんたでも同じことを言うね」



スタンは倒した。ストワード国王暗殺、そして戴冠式襲撃は他でもないストワード王国の第二王子の犯行だった。アントワーヌが頭に乗せた冠は矢で撃ち落とされた時に割れてしまった。ティッキーの仇は取ったというのにメルヴィルもアンジェも素直には喜べなかった。

「胸糞が悪い……」

「そうね。自分勝手だとは思うけど、彼もああするしかなかったのかもしれないと思うとなんだか、ね」

「気持ちは分かるがそろそろ帰ろうぜ。過ぎたことを悔やんでも仕方ないだろ。敵は倒したんだしとりあえずはいいじゃないか」

アレストが2人を励ます。珍しく王子らしいことをする、とルイスが言うと「そりゃあまぁ王子だしね」と。

「砂の賊の件もこれで収まるといいが」

「スタンはあの砂を持っていたが出処があいつかは分からん」

「お。冷静だな。メルヴィル。その通りさ。……あいつは砂を襲撃に利用しただけだ。まだなにかあるだろう」

含み笑いをする。もしかして全部わかっているのか?この男はたまにそう思うような口振りで話す。

「ぼっちゃんたち!帰還の準備が整いました。行きましょう」

リヒターに言われて一同は荷物を持ち立ち上がった。



〜夜 ストワード王国 郊外〜


「寒いわね」

「もうすぐシャフマですからね。夜の砂漠は冷えます」

「もうシャフマか。順調で良かった」

「父上になにかあったらまずいですからね」

アレストがイタズラっぽくヴァンスに言う。

「なにもない。それに危なっかしいお前を残しては死ねん」

「父上までそんなことを言うのですか?」

「戴冠式のとき、ヴァンス様に口塞いでもらってたくせに」

アンジェが笑うとアレストが「そうだったか?」ととぼける。

「本当に変わらないな君は。きっと王になっても変わらないんだろう」

ベノワットが目を細める。たしかに、アレストはずっとこうだと思う。

「全くだ。危ない王子に仕えると苦労する」

メルヴィルが舌打ちをする。

「皆さんの言う通りです。勝手な行動は謹んでもらいたいですよ」

リヒターがため息をつく。

「ギャハハ!!悪いね!困った王子サマでさ!!」

アレストが破顔する。メルヴィルの眉間のシワがまた濃くなった。

この光景も見慣れてきた。きっと昔から……そしてこれからも……アレストが即位して王になっても、シャフマ王国騎士団はこんな感じなのだろう。

「ルイスもそう思うわよね!?ほんと、アレストって」

「ボンクラ王子だ」

「そうそれ!」

「そうだね」

ルイスが頷くとアレストがまた大声で笑った。

「軍師サンまで!!ギャハハ!!いいさ、好きに言っててくれ。俺は楽しいぜ!」

困った王子サマ。しかしこれで救われることもあるのだ。

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