第4話
〜朝 大広間〜
「おはよう、ルイス。今日はあんたに会わせたい人がいるぜ。入ってこい」
てっきり討伐の話だと思ったが違ったようだ。会わせたい人?
「ドモアだ。軍師、これからよろしく頼む」
長い銀髪の女性だ。ルイスより年上だろうか。落ち着いた声をしている。
「ドモアは槍使いの女騎士だ。ストワード出身だが、いろいろあってシャフマの騎士団員になっている」
ストワードはこの前アレストから聞いた北国のことだ。
「よろしく」
ルイスが言うと、ドモアが力強く言った。
「任務には全力を尽くす」
「……それで、ドモアからさっき聞いたんだが、そろそろ父上が帰ってくるらしい。あ、ドモアは父上の護衛をしている騎士団の一人なのさ」
「そうだ。王子、ヴァンス様がいなかった期間になにか問題などはなかったか?」
「……あぁ。今のところは何も」
アレストは賊のことは言わずに首を横に振った。
【賊討伐】
【戦闘前】
〜王宮から少し離れた村〜
「この辺りは小さな村のはずですが、メルヴィルの言う通り人気がありませんね」
リヒターが辺りを見回す。たしかに村人の声が聞こえない。
「ふん……やはり村が賊に荒らされていたか」
「それにしては家とか綺麗よね。どういうことかしら」
アンジェの言う通り、家や施設が荒らされた形跡はない。火をつけられたりドアを壊されたりしたら村人が逃げる理由になるが……。
「この先に偵察部隊がいるはずです。合流しましょう」
リヒターの声に一同が頷いた。
「……!なんだあれは」
砂が動いている。いや……あれは
「砂が人型になってるわ!?そ、それとも人が砂になってるの!?どどどっちか分からないわよ!」
取り乱すアンジェの手を握りながら、ルイスはそれを観察する。と、砂が完全に人の形になった。
「どうやら砂が人型になるらしいな」
「め、メル!そんな怖いこと言わないでよ!お化けみたいだわ!」
たしかにそうだ。しかしあの砂は生きているのだろうか。
「!村人が逃げています!あの人型の砂に襲われていますよ!」
「で、でもどうしたらいいのよ!?」
「斬ればわかること。軍師殿、あれを倒すぞ」
【戦闘終了】
「ふぅ、なんとか片付きましたね」
リヒターが重い盾を下ろす。ルイスもほっと息をつく。あれはなんだったんだろうか。前と同じく死体はただの人間のように見えるが……。
「リヒターさん!無事でしたか!」
黒髪の青年が走ってきた。爽やかな目元をした、槍を持った青年だ。青い瞳が綺麗に光っている。
「き、君は……ルイス軍師!久しぶりだな。俺はベノワットだ。前に一度共闘したことが……って覚えてないよな。たしか2年ほど前のたたかいだったから」
記憶喪失、と言う前に自己完結されてしまった。
「ルイス、偵察部隊に行かせていたベノワットです。これからは同じ部隊でたたかうことも多くなると思いますので、名前を覚えておいてくださいね。……で、ベノワット。なにかわかったことはありましたか?」
「はい、リヒターさん。この賊ですが、槍で心臓を突いたときに口から砂を吹き出して……まるで血の代わりのように砂が身体から出てきたんです。もしかして、なにか魔法の呪いをかけられていたのかもしれません。それか、謎の伝染病の類かと」
「そんな伝染病は聞いたことがありませんよ。しかし、そうですか……実は私たちも変だと思っていたのです」
後ろで手を組んで座っていたメルヴィルが頷く。
「斬った感触がなかった。まさに砂の身体だ」
「メルヴィル、君がここにいるなんて珍しいね。……やっぱり君もそう思ったのか。死体を調べる必要があるかもしれない。リヒターさん、調査しましょうか」
「そうですね」
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