ep23 説教
「蒼空くん、金輪際、必要最低限しかわたしに関わらないでください」
「美波!!」
またこの夢だ。そう、本来は恋人と過ごす最高の誕生日になる予定だった、この前の土曜日。それがこんなことになるとは思わなかった。さっきの美波の言葉は完全に夢だ。でも、それが現実になるんじゃないかとヒヤヒヤしている。今日は、あれから1週間は経っている。「おはよう」と毎日、美波にはWIREを送っている。しかし、それが既読になることはない。はぁ、こうやって終わるのか、恋人の関係って。
それだけは何としてもさけたい。でも、はぁ。
「どうすりゃいいんだよ」
プレゼント? いや、それだと物で釣ってるみたいでオレは嫌だ。正真正銘、オレは美波が好きだし、愛している。これからもずっとそばにいたい。
「ちょっと出かけるか」
当てもなくブラっとして頭冷やすか。ブラっといえば、美波と出会った時は、ブレザーに美術の水入れの水とパレットについてた絵の具つけられたよなぁ。次の日に、美波が教室にきて、ブレザーとブラを間違えたよなぁ。懐かしいなぁ。と思い出したがそれからまだ2ヶ月くらいしか経っていない。
「なーに、にやけてんだ、空くん!!」
「あっ、ヒミコさん……」
公園のベンチに腰掛けて、雨音の登場くらいから大雑把に話した。
「で、三条 蒼空はどうしたいの?」
「オレは美波が好きだし、離したくない!!」
そこに、ガサッと音がした。
「蒼空く……ん?」
「美波!!」
「その口でわたしの名前を呼ばないでください!! サイッテー!!」
「違うんだ!!」
「三条先輩ってとんでもない女たらしだったんですね。雨音さんといい、ヒミコ先輩にも手を出して」
「違う!! オレが好きなのは、山下 美波。キミだけだ!!」
「うそ、うそ、うそ、うそ。だったら、今、どうして、ヒミコ先輩と一緒にいるんですか?」
「アリイちゃん……。ウチはたまたま空くんがほけーと歩いてて、それで話聞いてただけだよ?」
「そうなんだ、たまたまなんだよ」
「うそだ!! 三条先輩もヒミコ先輩もわたしを騙そうとしてるんだ!!」
その言葉を聞いて、ヒミコさんは立ち上がった。そのまま、美波に思いっきりビンタをした。
「痛い!! どうしてです? なんでビンタしたんですか?」
「アリイちゃん!! あなたはまかりなりにも三条 蒼空の恋人でしょ!!」
「まぁ、まだ別れてませんからね」
「だったら、どうして信じてあげないの?」
「それは、雨音さんにも優しくするし……」
「雨音さんは知らないけど、まったく見ず知らずの接点のなかったあなたにも優しくする空くんだから、あなたは空くんのこと、好きになったんでしょ?」
「まぁ、そうですね」
「だったら、雨音さんに優しくしてもいいじゃないの。雨音さんのことを好きだとか、下心があるなら話は別よ? でも、空くんはずっとあなたのことを考えてくれているのよ。逆に雨音さんにきつく当たってるだとか、それなら文句言うのはわかるわ。空くんの言うことも信じてあげて。信じるのもまた愛だよ」
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