第6章 すれ違う2人

ep22 すれ違う2人

「蒼空さま」


うわぁ、よかった夢か。でも、なんで美波じゃなくて、雨音なんだ? まぁ夢は記憶の整理だとも言うし、別に気にしないでおこう。


今日は土曜日。

オレの誕生日であると同時、美波と水族館デートの日だ。


待ち合わせ時間は、午前11時に、水族館の最寄駅だ。


「あらっ、蒼空さま!! こんなところで奇遇ですわ」

「雨音、お前……」



「蒼空くん!!」


少し走ってきたようで、美波が少し息を切らしてやってきた。


「なーんだ、蒼空さま、今日も猫の骨とデートですのね」

「雨音さん!! 蒼空くんからは手を引く、それがこの前の勝負の条件だったはず!!」

「ふふっ、今日はホントにたまたまですわ」

「どうだか?」

「蒼空さま、ひどい、先ほどまで、あんなにヤラしい目でわたくしのこと見ていたのに」

「んなっ、みっ、見てないし!!」

「蒼空くん?」


言われて見ると、雨音もけっこういい体型だと思う。いわゆる、ボンキュボンタイプに服の上からだと見える。


「あは、蒼空さま、そんな熱い視線で見ないでくださいな」

「蒼空くん?」

「やばっ、あっ、いや、なんでもない」

「あら、猫の骨のピンチだわ。わたくしの同い年の魅力に気づいたようね、ね、蒼空さま」

「バカ言うな、オレの最高の恋人は美波だけだ」

「ホントですかぁ? 蒼空くん」


「そ、そんなことよりも、水族館行こう、美波」

「むぅ、今日はデート、2人で楽しもうって言ってたのに、どうして雨音さんの方が早く蒼空くんといるんですか?」

「そんなのオレが知りたいよ」


「どうして、わたしがいるのに、雨音さんに優しくしてるんですか!! どうして、どうして!!」

「オレは優しくしてないけど」

「うそだ!! どうして、蒼空くんはわたしだけのものにならないんですか!! もういいです!! 今日は帰ります!!」


美波!!と手を掴もうとした。それをひょいとかわしてスタスタ去っていく。これは追いかけるべきだよな。

オレも美波に負けじと美波を追いかける。美波を離したくない。その一心だった。


「美波!!」


美波に追いつき、オレは思わず抱きしめた。しかし、さっとオレを振り払った美波。





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