ep15 夢を語る

「秋ですねぇ」

「そうだねぇ」


こうゆるーく会話しているのは、オレとアリイちゃんだ。さっきちょうど、放課後の中庭でアリイちゃんが読書しているところに、オレがひょっこり来たわけだ。もちろん、意図的ではない。ただし、オレのアリイちゃんに会いたいと言う思いが伝わったのかもしれない。こういう好きな子と中庭でまったりすごすのも乙なものだ。


「先輩は2年ですけど、進路とか決まってます?」

「オレは進学かなぁ、できれば、この関西圏で、関東に戻るのは嫌だなぁ」


それを聞いてアリイちゃんはホッと胸を撫で下ろした。


「進学ですかぁ、勉強続けるんですねぇ」

「まぁ、一応、オレ、学校の先生になりたいんだ」

「わぁ、大人になっても勉強続けるんですね、どうしてです?」

「今まで何人も学校の先生とか見てきたけど、本気で生徒に児童に教えたいって言う熱意を感じなくてさ、もちろん、ここの先生もだけど……。それで、オレが先生になって、生徒に児童は勉強はすごく大事だぞって伝えたいんだ。なんていうか、先生ってさ、勉強教えるのだけが仕事だけじゃないしさ」

「そうなんですか、頑張ってください!! わたしは……の」

「アリイちゃんは、この間高校受験終わったばっかだけど、今のところ就職したいのか、進学したいのか決まってる?」

「おっ、三条先生の放課後の秘密の進路面談ですね」

「まだ、先生になれてないし、ただの友達としてききたんだ。アリイちゃんの人生に少しでも関わった者として」

「なるほど、わたしは……やっぱり言えないよ先輩の奥さんになって一緒に教育改革進めたいだなんて……。付き合ってるわけでもなしし、今も友達としてわたしの進路に興味があるって言ったんだもん」

「どしたの?」


アリイちゃんが話すごとに言葉が小さくなっていってなんて言ってるかわからなかった。


「いえ、わたしはわたしの人生を歩みます!! 先輩、さよなら」

「え?」


そのままアリイちゃんは学校を後にした。オレなんか言っちゃいけないこと言ったのかな?その後、しばらくアリイちゃんはオレと学校ですれ違っても挨拶すら返してくれなかった。これは本格的に嫌われてしまったのか……?



「あれれ〜アリイちゃん、空くんのこと無視してるよね、意図的に」

「そうなんだよな」

「転校せーい、山下さんに何をした?」

「船原さんよ、いい加減名前で呼んでくれないか? 何をしたと言われてもなぁ。オレはただ単に夢を語っただけなんだけどなぁ」

「夢?」

「まぁ、先生になりたいっていう夢をアリイちゃんにちょっと話しただけなんだけど、それかなぁ」

「うーん」

「というか空くんはアリイちゃんのことどう思ってるの? ただの後輩? それとも友達?」

「うーん、オレはアリイちゃんのことは、後輩だと思ってるし、友達だとも思ってるし、それ以上に好きなんだ!! ……恋愛感情でさ。なんだろ、文化祭の前後から、日に日にアリイちゃんに惹かれていって」

「それを今、アリイちゃんにぶつけたらいいんじゃないのかな?」

「でも、今無視されているんだよ?」

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