第1255話、閃光、煌めく
超戦艦『バルムンク』に乗って、俺はヴェリラルド王国に帰還した。さらにアリエス浮遊島軍港駐留艦隊から増援を連れてきている。
改装された戦艦『ディアマンテ』と、妙高級重巡洋艦4隻、アンバルⅡ級クルーザー8隻が、トキトモ領の空に現れた。
「戦闘配置」
『バルムンク』艦内に警報が鳴るが、すでに全員が配置に就いている。
「ラスィア」
「戦況情報の照合完了。現在、第1艦隊が第2艦隊を支援しつつ、敵艦隊と交戦中。敵大型浮遊物体はノイ・アーベントへ接近しています」
戦術モニターに、新たなアイコンが表示される。都市シンボルの前に、防衛線が表示され、そこに迫る敵を示す赤色の壁。
副長席についているアーリィーがコンソールを見やる。
「敵は地上部隊を展開しているよ。識別はこれまた新型。タイプは巨人機だね。数はおよそ20体。ノイ・アーベントに駐屯している実験隊に迎撃命令が出てる」
「支援が必要かもしれないな。まず順番に対処していこう」
俺は通信機のスイッチを押した。
「ディアマンテ、艦隊を率いて第2艦隊の撤退を援護。第1艦隊と共同して敵艦隊を叩け」
『はい、閣下』
「あの巨大浮遊物体は『バルムンク』が引き受ける!」
戦艦『ディアマンテ』と12隻の巡洋艦部隊が、艦隊戦の方へと艦首を向けた。スティグメ帝国とウィリディス艦隊はすでに乱戦となっており、第1艦隊の『ギングエマン』やドレッドノート級戦艦も、敵戦艦と激しい砲撃戦を展開していた。
「国王旗だ。お父様が乗ってる?」
アーリィーが旗艦に国王の旗を見つけた。あの人、もうじき朝になる時間も起きていたんだな……。まあ、ファーストステップ作戦のことは知らせてあるから、その成否が気になって起きていたんだろうな。
「陛下にいいところを見せないとな」
大打撃を被った第3艦隊を丸々、アリエス浮遊島軍港へ退避させるついでに寄り道した成果ってやつを
「目標、敵巨大浮遊物体。レールガン、スタンバイ」
『バルムンク』の両舷、艦載機格納庫よりさらに外側のシールド部分に装備された電磁加速砲の出番だ。使用には莫大なエネルギーが必要になるが、シードリアクターの魔力を変換することで、その力を発揮する!
「いけるかな?」
アーリィーが不安がる。心配ご無用。
「敵が結界水晶防御をしてきた時の対策はしてきた。貫く!」
そのためにアリエス浮遊島軍港に寄り道したんだ。対結界水晶防御用の対艦ミサイルは実用化してある。レールガン用の砲弾にも、結界水晶無効処理を施した新型弾を作った。
「でも、まだレールガンでの実射はしていないんだよね?」
「失敗したら、ベルさんに倣って『バルムンク』で突撃するさ」
プロヴィア北で、ベルさんの超戦艦『レーヴァテイン』が巨大浮遊物体を撃破した第一報はこちらにも届いている。
さらに、陸上部隊が地下都市への上陸を開始したらしく、前衛の突撃揚陸艦に続き、魔力消失兵器を持つ機体も攻撃を開始しているという。
「向こうに敵の目が行けば、と思っていたけど、ちょうど敵も攻勢に出てくるとか」
ここのアンノウン・リージョンも塞いでおくべきだったかな、と少々後悔。しかし、その分の埋め合わせはしないといけないな。仕掛けた分のお礼はさせてもらう。
『「バルムンク」、艦首固定。敵浮遊物体、レールガンの射線に捉えました』
シェイプシフター操舵手の報告。『バルムンク』のレールガンの方向は前方に固定されている。目標に艦首を向けるか、あるいはポータルで転移させることで敵を撃つ。
「あれだけ大きい的だ。撃ち抜けよ!」
『レールガン、砲弾
シェイプシフター砲術長が言った。魔力を電力に変換。シードリアクターの膨大なエネルギーが、その一撃のために収束する。レールガンの砲身内の保護も同時に魔力が用いられ、これを一発撃つだけでも通常動力艦では困難だ。
『射撃準備よーい、よし!』
「撃てっ!」
バルムンクの両舷に一門ずつ装備されたレールガンが閃光を発した。直後、巨大浮遊物体――ケントロンの結界水晶を貫通し、その巨体に砲弾がめり込んだ。
「次弾――」
装填用意と告げようとした瞬間、浮遊物体の反対側が吹き飛び、派手な爆発と破片が飛び散った。
そこから始まったのは無数の爆発。内部を誘爆しまくった結果、敵浮遊物体は各部から炎を上げた。
・ ・ ・
時間は少し戻る。
ノイ・アーベント地下第七研究所より、スーパーロボットT-Aが秘密エレベーターより地上へと上がった。
T-A2号機に乗るヴィルは、専用のパイロットスーツをまとい、コクピットにいた。少し前まで複座に改造されたが、今はそれはしまわれている。つまり、ヴィルはひとりだ。
『あたしがいないからって、気ぃ抜くんじゃないわよ!』
「わかっているよ!」
口うるさいプリムは、ここにはいない。T-A2号機の横――地下エレベーターより上がってきたT-A1号機に乗っているのだ。
この1号機はエルフの里にて建造され、以後そのままとされていた。だがシードリアクター搭載機であることから、スティグメ帝国侵攻用に改造を施すため、第七研究所に運び込まれていた。
『改造前だったのは幸か不幸か』
ぼやくようにプリムは言った。
『改造されていれば、あたし1機で敵をやっつけられただろうけど、その改造が始まっていたら、今回出撃できなかった』
「……」
『いい、ヴィル? 敵は巨人機。図体はこっちと互角だけど、数はこっちの十倍。引き締めてかかりなさい!』
「了解!」
そうだ。ここまでこの小さな先輩からしごかれつつ、この鉄巨人を使いこなせるように頑張ってきた。
ノイ・アーベントと、そこに住む幼馴染みのためにも、今度こそ守るのだ。
『ベルク・アイン、出るわよ!』
プリムが操るT-A1号機――ベルク1が一歩を踏み出した。魔力通信機から、整備士官の声が聞こえる。
『2号機、どうぞ!』
「ベルク・ツヴァイ、行きます!」
重々しい人型巨人が、大地にその足跡を刻む。
ノイ・アーベントに迫る巨大浮遊物体。その前衛に敵巨人機の群れが、ふたりを待ち構えていた。
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