第1252話、壊滅、空母機動艦隊
「こいつら!」
アーリィーは魔神機リダラ・バーンを飛翔させる。追いすがろうとする敵機はリダラタイプの改造型と思われる漆黒の機体。
空中戦だ。背中の巨大なウイングスラスターが、さながら悪魔の翼のようだ。従来のリダラタイプに比べても格段に速く、また腕もいい。
肩の魔法砲を撃ち込む。しかし漆黒のリダラタイプは素早く
「Sランク魔神機についてくるなんて!」
でも――アーリィーは上昇から急転回。魔力を機体に注ぎ込み、出力ブースト! リダラ・バーンの白き機体が輝く。
「ブリッツ!」
稲妻の如き、高速移動。ホーリーブレードによるすれ違うざまの一閃で、敵リダラタイプの右腕を両断した。
「……避けられた!」
本当なら胴も切り捨てるはずが、敵機も超回避で腕一本の損傷に留めたのだ。
と、リダラ・バーンを追っていた2機のリダラタイプがそこで急速離脱に掛かる。
「逃げる……?」
わけが分からないが素早く戦況を確認する。
第3艦隊の艦艇がさらに減っていた。例の長距離狙撃をする鬼神機のもとに、航空隊は到達できない。
空母『
これまで共に戦場を駆けた艦隊の
『アーリィー様、この敵は――』
通信機からオリビア隊長の声が聞こえた。近衛隊仕様のレアヴロードを駆る彼女だが――
『危険――』
ガリガリと音を立てて、通信機が途切れる。片手片足を失い落ちていくレアヴロード。
「オリビア!」
撃破したのは、風の魔神機に似た鬼神機。セア・エーアールの紛い物!
アーリィーは判断に迷った。近衛機や戦闘機を阻むエーアールもどきか、長距離狙撃を試みているもう1機の機体か。
「迷ってる場合じゃない!」
アーリィーはリダラ・バーンを狙撃機体へと向ける。アレを始末しないと艦隊は文字通り全滅だ。
「それに――」
狙撃機へ向かえば、風の魔神機もどきもこっちへ来る……!
その時、危険を察して『ブリッツ』による回避機動を取る。先ほどのリダラタイプが3機、雲の中から現れた。
「そう
さっき相手をした腕なら、一度に3機はさすがに厳しい。
ブリッツの連続機動で――アーリィーが撃墜までの機動を瞬時に思い描いた時、パッと3機にリダラタイプが散開した。
「!?」
緊急回避。強烈な炎の柱が、リダラ・バーンの足をかすめた。敵狙撃機がアーリィーを狙ってきたのだ。
「そっちまで狙ってくるなんて――」
呻くアーリィー。スッと陰がよぎった。リダラタイプが一機、頭上から飛び込んできたのだ。
「しまっ――」
敵機の姿がはっきりとアーリィーの網膜に焼き付いた。迫り来る死の瞬間。恐怖を感じる間もなく、眼前に迫ったリダラタイプが跳ねた。
――え?
破片を
『無事か、アーリィー?』
「ジン!?」
聞こえてきたのは、ここにいないはずの愛しい人の声。絶対的窮地の場に、アーリィーが世界一頼りにしている魔術師が駆けつけた。
・ ・ ・
俺はタイラントSのコクピットにいた。新型リダラと思われる敵魔人機が、アーリィー機を狙ったのでマギアブレードライフルを叩き込んでやった。
その白い機体に乗っているのは、俺の嫁だぞ!
転移プラズマ弾で1機撃墜。残り2機! 俺はタイラントのマギアスラスターを噴かす。流星のように加速しつつ、2機のリダラタイプを狙う。
「スタンプガンを食らえ!」
マギアブレードライフルの引き金を引く。銃口の転移装置によって飛ばされたプラズマ弾は、その瞬間、狙った先に命中している。まるでスタンプを押すかのように命中するから、スタンプガンだ。
「2機目!」
リダラタイプの胴体、頭をグズグズに潰し、墜落させる。
残り1機がこちらに気づいて転進するが、逃がすかっての! ワープドライブで一瞬で距離を詰めて、スタンプガンをズドン。この弾を転移させる利点ってのは、敵の防御障壁もすり抜けて直撃させられるってことだ。
『3機目、撃墜だ、主』
ディーシーが報告した。タイラントのコアと連動しているDCロッドは、索敵とナビゲートを行う。
『敵、リダラタイプの新型が3機。それとセア・ピュールとセア・エーアールの改造型だ』
「魔神機を引っ張り出してくるとはね」
俺は、リダラ・バーンを見た。
『ジン、ありがとう。また助けられた」
「間に合ってよかった」
魔神機に乗って出撃したって心配したんだぜ。
『でも、こっちへ来てよかったの?』
「相棒が行け行けってうるさくてね。退路を断たれるわけにもいかないし、何よりアーリィーの危機と聞いたら即駆けつけるさ」
『ジン……。君って人は』
通信機の奥でアーリィーは照れているようだった。
『帰ったら、いっぱい抱いてね。――その前に、艦隊を叩いている奴を叩かないと!』
「さすがにこれ以上、好きにやらせるわけにはいかないよな!」
俺のタイラントとアーリィーのリダラ・バーンは、すでに狙撃機体であるセア・ピュールの改造型へ向かっている。……そういえば、射撃がやんでいるような?
『主、敵機は撤退したようだ』
ディーシーが報せた。
『セア・ピュールは後退。エーアールもあり得んスピードで離脱中。……厄介だな。本家エーアールよりも速い』
「こりゃ、グレーニャ・エルもご機嫌斜めだろうな」
俺のタイラントがアーリィーのもとへ駆けつけるのと同じ頃、『バルムンク』からエルのセア・エーアールも発艦して第3艦隊の救援に向かわせたのだ。この分だと顔見せ程度で終わったかもしれない。
『ジン、追撃する?』
「いや、艦隊に戻ろう。手酷くやられたからな。これ以上ダメージを受ける前に母港へ転移離脱させよう」
率いてきたアーリィーにとってはショックの大きい戦いだっただろう。損失分は、第二次八八八艦隊建造計画艦で補いはつくが、今はまだ戦っているベルさんやシェード将軍の艦隊のこともあるし、もうひとつ――
「ディアマンテから通報があったが、東トキトモ領のアンノウン・リージョンでも敵が現れた。これにも対処しないと、王国が危ない」
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