第1215話、黒騎士と風の女神の鬼退治


『ウィリディス軍、シャドウバンガード隊長、魔法騎士サキリス・キャスリング! リダラ・ドゥブ、参る!』

『スティグメ帝国、十二騎士第八将ぉ、ルピオ・カルプ! 鬼神機スコルピオスが相手してやるぜぇ!』


 サキリスの魔神機と、スピオの鬼神機が激突する。


『いちいち名乗り、うぜぇ!』


 そう割り込むのは魔神機セア・エーアールのグレーニャ・エルだ。二本のブレードを手に、スコルピオスに斬りかかる。


『おおっと!』


 スコルピオスは前へ倒れ込む姿勢から、尻尾――テールブレードでセア・エーアールの斬撃を弾いた。


『騎士の名乗りから横入りたぁ、やってくれんじゃねえの。地上人のクズが!』

『吠えるな吸血鬼!』


 セア・エーアールはスコルピオスの後ろに着地する。正面はサキリスのリダラ・ドゥブがいて、鬼神機はそれと対峙した格好のままだ。


『あたしにケツ見せていいのかよ、吸血鬼!』

『魔神機2機はめんどくせぇ! お前ら! やっちまえ!』


 ルピオの呼びかけに、スティグメ帝国の魔人機が飛来する。しかし――


『そうはいきませんよ!』


 セア・フルトゥナ・シルフ――エリー・クレマユーが操る改良魔人機と、シャドウバンガード隊機が、乱入しようとしたヴァンピールを迎撃する。杖型拡散マギアランチャーからの攻撃が、ヴァンピールの防御障壁を貫通し火球へと変える。

 援軍が断たれ、ルピオは舌打ちする。


『ちっ。だが――』


 正面からサンダーランスを構えて突っ込んできたリダラ・ドゥブに対して、スコルピオスはジャンプした。


『!!』


 突進に突進で返すと思わなかったサキリスが一瞬戸惑った。スコルピオスは腕部のスパイクを突き出した。


『シャアアアアッー!』


 リダラ・ドゥブの左肩が吹き飛んだ。そのまま漆黒の魔神機の背後へと飛び、追い打ちをかけるべく振り向けば。


『おせぇ!』


 風の魔神機セア・エーアールが肉薄にくはくしていた。

 こっちの動きを予想してやがった!――ルピオは両腕で防御姿勢を取りつつ、テールブレードで迎え撃つ。


さぁーん本めぇ! ぬおっ!』

『ばーか。お見通しなんだよ!』


 スコルピオスの両腕ガードに、セア・エーアールは蹴りで対応。足場にしつつ、スコルピオスの尻尾攻撃をブレードで迎撃、いや両断した。


『ぬぁあにぃい! オレ様の自慢の尻尾がよぉおおおっ!』


 ルピオは激昂げきこうした。

 スコルピオスの腕を反動に飛び上がったセア・エーアールを目で追い――


『正面がお留守でしてよ?』


 サキリスのリダラ・ドゥブがサンダーランスを射出した。防御障壁を貫通する破魔鋼の槍はドリルのように回転しながらスコルピオスの胴体に突き刺さりコクピットをえぐった。


『ぬぉぉぉっ!? ハッ――』


 鬼神機のリアクターが爆発しルピオ・カルプの体をちりひとつ残さず焼却した。

 四散した鬼神機を見やり、サキリスは言った。


『よいアシストでしたわ。グレーニャ・エル』

『ケッ、別にアシストするつもりなんてなかったけどなァ』


 本当ならひとりで倒せたとグレーニャ・エルは思っている。


『それよか、やられたみたいだけど、ひとりで帰れるか?』

『馬鹿にしないでくださいませ。大したダメージはありませんわ』

『あ、そう。じゃ、アタシは行くぜ』


 セア・エーアールは飛び去る。周囲の戦いは下火になりつつある。グレーニャ・エルは王都を見下ろしほくそ笑んだ。


『まだ、こっちは忙しそうだな!』


 大帝国の駐屯軍が、ウィリディス軍の上陸部隊と交戦している。ウィリディス軍の地上用魔人機に、パワードスーツなどが大帝国の魔人機と戦いつつ、歩兵をなぎ倒している。

 大帝国駐屯軍の防衛網は、すでに崩壊していた。



  ・  ・  ・



 クーカペンテ国王都レガソ中央にあるアセロ城は、駐屯軍の本部拠点だった。

 城の防衛設備を、マルカスらのトロヴァオン戦闘機が真っ先に排除。城壁の敵兵にアドヴェンチャー号も下方プラズマ砲座で反撃。一掃しつつ着陸する。


「ヴェルデ、後は任せる。さあ、ヴィック。王宮へ乗り込むぞ」

「おう!」


 俺はシェイプシフターメイドに船を任せると、ヴィック、ティシア、そしてガストンらクーカペンテの戦士たちと共に城へと乗り込んだ。

 随伴ずいはんしたアルバトロス上陸艇からも、シェイプシフター兵とパワードスーツ『ウォリアー』が降りて、城内制圧に加わる。


「エアブラスト!」


 俺が正面に風の攻撃魔法を叩き込めば、大帝国兵たちが吹き飛び、あるいは怯む。そこへライトニングバレットを携帯したシェイプシフター兵、クーカペンテ戦士たちが突撃する。

 うん、魔法使いは支援し、前線は兵が押し上げる。完璧だ。


 PSウォリアーが肩に担いだロケットランチャーを放ち、本城への閉鎖された扉を破壊した。侵入口を確保!

 ヴィックが大帝国兵を切り倒しながら叫んだ。


「進め! 国を取り戻すんだ!」


 クーカペンテの戦士たちの動きもキビキビしている。潜伏などでしばらく実戦から離れていたらしいが、パッコローの駐屯地を攻略したのが勘を取り戻す演習になったようだ。

 内部の制圧は思いのほか、早く進んだ。


 大帝国兵たちの戦意はすでに失われており、投降する者が相次いだのだ。

 スティグメ帝国に降伏しようとし、頼みになるはずのその吸血鬼の艦隊は殲滅せんめつされた。徹底抗戦をしようとする気概は、残っていなかった。


 かくて、アセロ城はシーパング同盟軍とクーカペンテ戦士により制圧された。東方方面軍クーカペンテ駐留軍主力は、降伏したのだ。

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