第1213話、同盟艦隊 VS 帝国連合艦隊


 双方の艦隊同士が激突した。


 ディグラートル大帝国、スティグメ帝国連合艦隊は、戦艦22、クルーザー45、フリゲート80を数えたが、対するシーパング同盟艦隊(仮)は、


 シーパング艦隊こと第七艦隊、戦艦12、空母9、巡洋艦16、護衛艦24。


 ヴェリラルド王国第三艦隊、空母8、巡洋艦16、護衛艦22。


 ファントム・アンガー艦隊、巡洋戦艦3、空母6、巡洋艦13、強襲揚陸艦6、護衛艦22、フリゲート24。


 大帝国解放軍の艦隊、戦艦5、巡洋戦艦3、空母6、巡洋艦9、強襲揚陸艦3、コルベット5、フリゲート24。


 レーヴァテイン艦隊、超戦艦1、突撃空母3、突撃揚陸艦3、フリゲート9。


 バルムンク艦隊、超戦艦1、戦闘空母1、空母1、巡洋艦4、強襲揚陸艦3、フリゲート12。


 総勢274。その他支援艦や、ステルス艦を含めると300を超える大艦隊である。

 そして同盟艦隊34隻の空母から発艦した戦闘機、攻撃機は帝国連合艦隊に殺到した。


 帝国連合艦隊もスカルヘッド、スカイシャークといった迎撃機を出したが、その数の差は圧倒的だった。

 光線やミサイルが飛び交い、多数の火球や広がっては消えた。



  ・  ・  ・



 俺はアドヴェンチャー号を操り、クーカペンテ王都の上空へと侵入した。すれ違う敵機には、船体の上下に搭載されている旋回式連装プラズマ砲や、両端の単装プラズマ砲を浴びせて撃墜する。

 砲手を担当しているのはシェイプシフターメイド のヴィオレッタとヴェルデ。サブパイロット席にはディーシーがいる。


「敵の注意は王都から艦隊に向けられたようだ」


 ディーシーは言った。操縦室から見える景色に、ヴィックとティシアは顔を引きつらせていた。


「王都が燃えている……」

「まったく、冗談じゃないぞ」


 後方から強烈なプラズマ弾が通過し、スティグメ帝国クルーザーを轟沈ごうちんさせた。


 アドヴェンチャー号の後方にはマルカス率いるトロヴァオン中隊ほか複数の航空隊がいたが、さらにベルさんの座乗する超戦艦『レーヴァテイン』もついてきていた。

 とにかく突撃ありきのベルさん艦隊は装甲が厚く、袋叩きにされるのを承知で突出するのだ。


『レーヴァテイン』の46センチ連装プラズマカノンは、次々と敵艦――特に仕掛けてくる敵戦艦を返り討ちにした。

 戦線を食い破る勢いのレーヴァテイン艦隊に、敵連合艦隊の矛先ほこさきが向いたことで、シーパング同盟艦隊の各戦艦群も怒濤どとう猛撃もうげきを仕掛けた。


「さすがベルさんだな」

「どういうことだ?」


 ヴィックが聞いてきた。


「簡単な話だ。同盟艦隊は隻数は多いけど、戦艦の数ではさほど差がない」


 砲撃戦で、一番攻撃力と防御力が高いのが戦艦だ。


「まあ、性能面では『バルムンク』『レーヴァテイン』の二大超戦艦がいるけど、スティグメ帝国の戦艦も中々強力だ。まともに撃ち合ったら、こちらも相応の被害が出る」


 だがベルさんの『レーヴァテイン』が敵戦艦を引きつけているおかげで、こちらの他の戦艦が敵戦艦の砲撃にさらされにくくなるというわけだ。


「ブァイナ装甲と強力な防御シールドを持つ『レーヴァテイン』なら、たとえ敵戦艦全部から集中砲火を浴びせられても沈められることはない」


 つまり、敵は無駄な努力をしている、以上。まあ、放置していてもやられるから、敵にとっては非常に厄介としかいいようがない。


 そして――『バルムンク』。


 もう1隻の超戦艦が、隊列を組むシェードの解放軍艦隊より前に出て、スティグメ帝国艦隊の砲撃を引きつけている。


 こちらも46センチ三連装プラズマカノンで、敵戦艦をハンマーで叩き潰すが如く、仕留めており、被害拡大を恐れたスティグメ帝国戦艦群の砲撃が集まっていた。


 ……俺は不在だが、俺の分身がうまく艦隊を動かしている。まあ、俺なんだ、当然か。


 そうやって『バルムンク』が『レーヴァテイン』と同じく切り込んでくるので敵が警戒している間に、シェード艦隊の戦艦、巡洋戦艦8隻が配置についた。全主砲が敵戦艦に指向、そして最大火力による集中砲火が突き刺さった。


「やるな、シェード将軍」


 その間にも、戦闘機部隊はスティグメ帝国の航空機を撃墜している。地上を爆撃しようとしているブラックバット戦闘爆撃機の分隊を見つけ、俺はアドヴェンチャー号をその側面から背後へとやった。

 上下の連装プラズマ砲座が連続してプラズマ弾を浴びせて、コウモリ爆撃機を墜落させる。


「修羅場だな」


 王都上空は航空機が入り乱れている。あまり艦に近づき過ぎると砲撃の巻き添えの可能性もあるから注意が必要だ。


「狭い空だ」

「同感だ、主よ」


 ディーシーも同意した。あまりの数の多さと目まぐるしさで索敵機器を読み取るのも難しいようだ。


 爆沈する帝国クルーザー。こちらは巡洋艦以下の艦艇で圧倒しているし、手の開いている艦上爆撃機や攻撃機が砲撃の邪魔にならない範囲で攻撃をかけており、帝国艦隊はその数をすり減らしている。



  ・  ・  ・



 劣勢だ!


 スティグメ帝国第8艦隊、旗艦『ルベルカウダ』。指揮官であるルピオは咆える。


「クソが! クソがっ!」


 あの突出する2隻の戦艦――『バルムンク』と『レーヴァテイン』に引っかき回された。最大火力の元を潰そうとしたが、雑魚どもの統制集中射撃に、第8艦隊の戦艦群はあっけなく半減した。


「大帝国のクソ雑魚艦隊は何をしてやがる!?」

「はっ、すでに例の突出する戦艦によって半壊しております!」


 艦長の報告にルピオは声を荒げた。


「何たる役に立たねぇ下僕どもだ!」


 大帝国艦隊はすでに突出する艦隊に近接戦闘を挑まれ、次々と血祭りに上げられていた。超戦艦の砲撃はもちろん、それを取り巻く護衛艦も騎兵槍にも見えるそれを艦体から分離して、敵艦へと突撃させている。


 このままではマズい――ルピオは察していた。このままでは第8艦隊は全滅する。現状、地上に展開している艦隊を考えれば、それはとてもよろしくない。


「艦長、艦隊を集めろ。ひと塊となり、突撃する!」

「逆襲ですか?」

「いいや、反撃に見せて離脱する! 急げ!」


 ルピオの指示に、スティグメ帝国艦隊は集結を始めた。すでに帝国連合艦隊の戦線はズタズタに引き裂かれ、時間と共に敗色が濃厚になりつつあった。

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