第1160話、ベルさんの新型専用機
ベルさんは艦隊の次に専用機を
「こいつがオレ様の新型、ブラックナイトⅣこと、ブラックナイト・ベルゼビュートだ」
魔人機ではあるが、かなり悪魔チックで
両肩の巨大なシールド状の装備は健在。しかしバックパックのウィングが悪魔の翼じみて強化され、ボリュームが増している。尻尾もきちんと装備され、全体的に悪魔度がアップしたスタイルを持っている。
……趣味に走ったな、ベルさん。
「普通に魔神機でも通用する迫力があるな」
「ああ、魔神機に匹敵するか、それ以上の機体に仕上がってる」
魔神機サイズとしては大型の部類に入る。
「お前さんのタイラントに倣って、ダンジョンコアを制御コアに使ってる。ブァイナ金属DW材の複合装甲も使ってるから、大抵の攻撃は効かん」
「もうスーパーロボットじゃないか」
俺は、ブラックナイト・ベルゼビュートをぐるっと回って観察する。
「このサイズだと、シード・リアクターは装備できないだろう? 魔力消費が大丈夫なのか?」
「問題ない。オレ様が使う限りはな」
魔王様の魔力量は凄まじい。シード・リアクターに頼らずとも、充分な魔力を供給できるということだ。
「つまり、ベルさんしか使えないっことだな」
まさしく専用機。彼以外には操縦できない、というのが、強いて言うなら弱点とも言えるかもしれない。
「スティグメ帝国が鬼神機や巨人機を使っているからな。それに対抗できる兵器があるのは安心だな」
「おう、任せろ」
ベルさんは請け負った。
専用機の次は、艦隊の主力量産機。
「バンジャーという。魔人機型兵器だ」
ほう。確かにバックパックの形状やウィングなど、リダラタイプの飛行型魔人機を連想させる。
黒い塗装のされた機体は、ブラックナイト・ベルゼビュートほどではないにしろ、悪魔的なフォルムを持っていた。頭部の角の曲がり具合とか悪魔か地獄の戦士のようだ。
「魔人機と言うとパイロットはいるのかい、ベルさん?」
ランクが高い魔人機はシェイプシフター兵では動かせない。その能力を活かすには、魔力を持った人間が必要だ。
「こいつは無人機さ。ゴーレム・コアに近い制御システムが組み込まれている」
「人を必要としないのか」
もうそれ普通にゴーレムじゃん。そういや無人機型の魔人機って見たことなかったな。
そんなこんなで、次に見せられたのは航空機。
「航空機……?」
三角に尖った機首は短く、左右の主翼を含めた幅のほうが全長よりも長かった。
「こいつも無人機だな?」
コクピットが見当たらない。どこかドローンっぽいとも思える。
「ああ。いわゆる戦闘攻撃機で、制空戦闘も、対艦攻撃も、爆撃も対応している」
マルチロール・ファイターというやつだな。主翼は折り畳み機構を持っていて、空母の限られた格納庫スペースのことも考慮されていた。
「大したもんだ。ベルさんが全部考えたんだよな?」
「ディアマンテから、ちょっとデータを拝借したがな。大体のところはお前さんのも見ているし、じゃあやってみようってんで、こうなった。……感想は?」
「素晴らしい。後は数が揃えば、艦隊として実戦投入も可能だろうね」
俺は正直だった。
今のところ、超戦艦レーヴァテインは完成しているようだが、それ以外の艦艇はそれぞれ一番艦ができたところで、より本格的な建造のためのテストをしている段階だという。
もっともディアマンテら旗艦コアの演算を用いた各種テストは、従来のトライアルに比べたら遥かに短い時間で完了する見込みだ。
魔人機や航空機についても、テストで問題がなければ量産が開始される。
「それで、ベルさんはまだ試験に付き合うのかい?」
「いや、そっちはシップコアなり拠点コアでやれるから、オレは戻るよ。後はできてからのお楽しみってわけだ」
ベルさんが合流した。
・ ・ ・
アリエス浮遊島軍港に戻った俺とベルさん。
そのまま格納庫へと足を向ける。そこにはエルフの里防衛戦で、
「大帝国さんからかっぱらったはいいが、こいつをどうするんだ、ジン?」
ベルさんが聞いてきた。
かつてリムネ・ベティオンがこいつに乗っていたが、今の彼女は魔神機操縦者に必要な魔力量、そして適性を持っていない。
魔神機の操縦には、一種の才能が必要だ。アーリィーやサキリスが動かせたのは、魔力の泉スキルという、魔力の増え方が常人のそれと違う力を持っていたからだと思われる。ただ、必ずしも魔力の泉スキルを持っていればいいというものでもないようだが……。
「精霊コアをいじれば、常人にも動かせるようにはなる」
俺も十二騎士専用魔神機を預かったが、その操縦に関して、ディーシーが精霊コアを書き換えたから動かせた。そうでなければ十分ともたずに潰れてしまう。
「でもパイロットがいるかなぁ……?」
「制御するコアをいじれるなら、パイロットは魔人機を使った経験のあるお前んとこのガキの誰かでいいんじゃねえか?」
魔術人形の子たちの誰かか? もともと魔神機パイロットを作るために実験されて育てられた子供たちではあるが……。
水の魔神機セア・ヒュドールは、広範囲に影響するフィールド魔法を使用できる。エルフの里でも、その存在は戦術のみならず戦略にも影響を与えかねないほどのものだった。
これを有効活用するのは、今後の戦いにも有利となる局面も出てくるだろう。
だが扱える者に高い魔力適性を求めるというのがネックだ。制御用のコアを書き換えれば、ある程度だましはきくが。
積極的に俺を手伝ってくれようとしている子供たちに話をすれば、案外志願しそうではある。
「要検討だけど、最悪、眠らせておくのもありかもしれないな」
敵にこの魔神機がないというだけで脅威がひとつ減る。それだけでも充分敵戦力の削減に成功したと言える。
「まあ、パイロット候補は探しておく」
遊ばせておくには惜しいもんな。
俺とベルさんで話していると、シェイプシフターが現れた。たちまち魔女――スフェラの形となる。
「主様、緊急報告がございます」
「緊急?」
「皇帝でも見つかったか?」
ベルさんが茶化したが、スフェラは相変わらずの真面目ぶりで答えた。
「大帝国で動きがありました。貴族派勢力が大帝国内の亜人種
「……何だって?」
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