第1154話、木偶の坊退治
「タイラント、ジン・トキトモ。ソードナイト1、出るぞ!」
戦艦バルムンクの右舷発進口から、俺のタイラントが電磁カタパルトで打ち出された。
『アーリィー・ヴェリラルド。リダラ・バーン、出る!』
続いて白騎士こと、魔神機リダラ・バーンが発艦する。
そういや、俺とアーリィーが一緒に出撃したのっていつ以来だっけ。少なくともタイラントとリダラ・バーンという組み合わせは初だと思う。
近衛の魔人機レアヴロード、エルフたちの改造魔人機リダラ・エゼルが、俺とアーリィー機に続く。
いずれもマギアスラスターによる飛行が可能な機体だ。
すでにゴーラト王国王都では、トロヴァオン戦闘機やドラグーンが、敵航空機と空中戦を演じている。
『敵魔人機、上がってくる!』
アーリィーが報告した。
デビルナイト、ヴァンピールといった、半ばお馴染みとなった吸血鬼型魔人機が王都の要所から飛び立った。翼持ちの魔人機は空中戦にも対応しているのだ。
『近衛隊、応戦用意!』
オリヴィア隊長の凜とした声が響く。レアヴロード隊が盾を構えて、向かってくる敵機に備える。
『エルフ隊、敵機を撃ち落とせ!』
ニムが率いる中隊に命じれば、リダラ・エゼルは長物でもあるマギアランチャーの砲口を向け、先制の一撃を放った。
このリダラ・エゼルはウィリディス軍が改修した魔人機だ。白エルフ用のリダラ・グラスをベースにしているように思えて、その中身はリダラシリーズの上位機と
同じマギアの名前を冠する武器のマギアランチャーだが、マギアブラスターに比べれば格段に威力は劣る。しかしマギアライフルなどの手持ち武装と比べれば、敵魔人機の防御障壁を何とか貫通できる威力はある。
その先制打は、たちまち十機ほどの敵魔人機を撃墜した。まさか防御障壁を抜ける威力と思っていなかったのだろう。回避しなかったので、狙われた敵機はそのまま障壁を貫かれて破壊された。
敵の動きに動揺が見えた。その隙をアーリィーは見逃さない。
『いまだ、一気に切り崩すよ! 突撃!』
リダラ・バーンを先頭にレアヴロード隊が一気にダイブして、敵機に近接攻撃を仕掛ける。
対魔人機戦闘は、基本は近接だ。障壁を装備して飛び道具に対する耐性が高いのが魔人機だ。自ずと接近戦となる。
アーリィーの白騎士は、光の速さで敵デビルナイトを一刀両断、そのまま駆け抜ける。近接高速戦闘が売りである魔神機である。
やるもんだ。すっかり使いこなしているアーリィーに、俺も脱帽。
近衛隊が前衛を引き受け、エルフたちが後方から射撃。敵の障壁を貫通できる武器があればこそだが、もとより射撃に才能があるエルフたちは、的確に敵の数を減らしていく。
前衛と後衛、見事な
さて、俺もお仕事しないとね。巨人機を――おっ!
「各機、巨人機からの攻撃を警戒!」
アポリト本島攻防戦の際の敵巨人機のエネルギー弾使用と同じ魔力反応を探知した。
直後、紫の光線が巨人機の額から放たれた。それは回避機動をとる俺たちの間をレーザーのごとくすり抜けた。
「あっぶねえ。見て回避は難しそうだ」
となれば――
「速攻で決める!」
俺はタイラントをフルスロットルまで加速させた。マギアスラスターが爆発的推進力を生み出し、一挙に距離を詰める。
巨人機が反応した。両手をこちらに向けると光の弾を連続発射した。
中の人間だってそうだが、機体そのものの耐久性にも影響が出る。構造が弱いと空中分解だってあり得るのだ。
『再生処理』
モニターの一角に、機体の加速によるダメージが表示されたが、すぐにコアが魔力による損傷部の再生を開始する。やっぱ、無茶な回避だったか。
だが、巨人機の側面に回り込めた。
さっそく解体したいところだが……ちょっとコイツを
巨人機が振り返る。
「図体がデカい分、懐に潜り込まれると鈍いな……!」
まずは足。巨人機の左足の膝関節に――解体!
魔力を送り込み、解体の魔法が発動。関節を構成するパーツを引き剥がし、バラして分断する。
するとその巨体を支え切れず、解体途中で膝が割れて巨人機が転倒した。ズゥンと地響きと共に近くの廃墟が巻き込まれて潰れた。
「これで動けなく……なってない、か!」
巨人機は両手を地面について起き上がろうとする。ならば次はその両腕だ。
肘関節を解体。タイラントから放たれた魔法が、巨人機の肘をバラバラにして、その胴体を再び地面に落とした。
こうなってしまえば、もはやこの巨人機は無力だ。
『お見事です、ジン様!』
ニムの声が聞こえた。見れば、タイラントの周囲に敵の姿はなく、エルフのリダラ・エゼルが睨みを利かせている。
『バルムンク』を通じて戦況を確認。アーリィーのリダラ・バーンと近衛隊は、敵魔人機を掃討しつつある。
地上戦も、王都に展開するスティグメ帝国軍を撃破、追い込んでいた。
「残るは、王城と捕虜収容所か」
と、その時、その王都の住民を収監する収容所から、いくつかの爆発が見えた。黒煙が見え、場は騒然となっている。
「どうやら、うちの地上部隊が突入したようだな」
『ジン様』
「王城と収容所を押さえる。地上部隊を支援してやれ」
『了解。第一、第二小隊、続け!』
リダラ・エゼルがスラスターの光をきらめかせて飛び去った。
人道的見地からも、ここまでやったからには現地住民も助けないとな。スティグメ帝国軍さえ叩ければ、こちらは目的を達成するわけだから。
少々気が早いが、これで地上に出てきたスティグメ帝国軍は、大帝国が相手をしている奴ら以外は
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