第1151話、ガンファルコン
バルムンク艦隊に、ポータルを経由してウィラート級戦闘空母『ウィラート』が合流した。
全長270メートル。アポリト軍の空中空母に戦艦の艦橋と砲を装備させたその戦闘空母は、飛行甲板を持つ戦艦のようなスタイルをしている。
俺は、戦艦『バルムンク』から『ウィラート』に移動した。その大きな格納庫に反して、艦載機はわずかしかない。
大型機――航空機には不釣り合いな砲を機首に積んでいる無骨な機体を
「こいつがガンファルコンか」
魔人機対応したサポートパーツ。莫大な魔力を生み出すシード・リアクターを搭載できない魔人機に、その恩恵をもたらす外部装着型装備である。
ディーシーがフンと鼻をならす。
「見た目は飛行機だが、なんともゴツゴツしているな」
「動く武器庫。積んでいるのはシードリアクターだけじゃない」
大中小のクリエイトミサイルポッド、遠隔攻撃ビットポッドに艦艇級のプラズマカノン、さらにはスーパーロボット級のマギアブラスターまで装備する。
「こいつ1機で敵艦隊ひとつ潰すってコンセプトで作ったからね。シードリアクターの魔力を使って、単機で圧倒的火力を発揮する」
世界樹の種子を用いた兵器プランにおいて、開発されたひとつ。数で圧倒する大帝国に対するスーパーロボット、スーパーウェポンだったが――
「最初の相手がスティグメ帝国とはね」
「本当にひとりで行くの?」
アーリィーが聞いてきた。ディーシーが口を尖らせる。
「我も行くから、主ひとりではないぞ」
「そうなんだけどさ……」
「心配ないよ、アーリィー。このガンファルコンは、ブァイナ鋼にDW材を用いた超装甲……つまり、スーパーロボットや戦艦『バルムンク』と同じで大抵の攻撃ではビクともしない」
単機で多数と戦うことを
「というわけだから、こいつの実戦テストを兼ねて敵の出現地点である魔物領域へ行ってくる」
そこには多数のスティグメ帝国部隊と艦艇が警戒に当たっている。単独で挑むには、中々ハードな戦力だがガンファルコンなら想定上は問題なかった。
・ ・ ・
まず用意するのは俺の愛機であるタイラント。いつものようにコクピットに乗り込み、杖形態になったディーシーをセット。
エレベーターを使い、『ウィラート』の飛行甲板へと移動する。
高空を飛行する戦闘空母から見える空には、無数の低い雲が見えた。艦の周りには、バルムンク艦隊の各艦艇の姿がある。
俺はタイラントを進ませる。背部のマギアスラスターを噴かして機体を空へと飛ばす。
『タイラントへ、ガンファルコン、射出します』
戦闘空母『ウィラート』の管制からの通信。視線を向ければ大型航空機ガンファルコンが甲板上で四枚のウイングスタビライザーを展開した。翼があれば航空機に見えてくる不思議。
『ガンファルコン、発進!』
この機体は無人機だ。操縦はゴーレムコアが担当している。ディーシーが言った。
『ガンファルコンの制御はこちらにリンクさせる。主、ファルコンの上に』
「了解。昔ロボットアニメで戦場まで機体を載せていく足場みたいなやつがあったな」
土台だっけか。まあ、知っている人は知っている。
このガンファルコンの上に載るタイラント。大出力エンジンにものを言わせて、ガンファルコンは加速した。
「おー、こいつは凄い」
この移動スピードだけでも、ガンファルコンを利用する価値はある。
一撃離脱の強襲突撃機だけあって、この足の速さはスーパーロボットとは比較にならない。
目的地への移動の合間に、魔物領域の大穴と近辺の情報を観測ポッドなどから仕入れる。
戦艦3、クルーザー9、フリゲート20。航空機40に地上に魔人機など50ほどか。
「かなりの戦力だな。これまで戦った1個艦隊
『奴らの出現地点を我らで塞いだからな』
ディーシーは言った。
『地上への出入り口がなくなっては困るということだろう』
「なら、穴を全部塞ぐってのは案外、有効な手かもしれないな」
もっとも、出入り口があの手の大穴だけとも限らないけどな。
『いつか別の穴を開けて出てくるんじゃないか? 連中がそんな諦めのいいとは思えないが』
「それには同意だ」
だから、俺たちで、こいつらを叩かねばいけないのだ。
『主、じき奴らが見えてくる頃だ。先にファルコンと合体しておくか?』
「ああ、戦闘になる前に済ませておこう」
『了解した。ドッキングシーケンス――』
ガンファルコンが速度を落とす。タイラントがファルコンの上面から飛び上がると、合体のための可変が始まる。
ガンファルコンの機首が、真ん中から左右に分かれる。某機動戦士系ロボだと、可変機の機首って盾だったりするが、このファルコンもそんな感じである。ただ、左右に分かれるタイプは記憶にないけどな。
タイラントは背部を格納状態に変形。そこからファルコン本体とドッキング。
左右に分かれた機首部分は、補助アームに支えられてタイラントの腕部に接続される。
脚部にも増加装甲兼スタビライザーが装着され、通称『ヘビーアタッカー』形態へ合体が完了した。
『各接続部、異常なし』
「ようし、派手にエントリーするとしよう!」
俺はタイラント・ヘビーアタッカーを加速させた。サポートメカであるファルコンの推進部が後方に集中しているので、正面への加速は戦闘機以上の高速を発揮する!
本来なら加速のGが掛かるところだが、コクピット内は加速補正装置により軽減されている。ウィリディスの機体は、訓練されていない子供の体も守る親切設計だ。
グングン魔物領域に近づいていく。ポツポツと見える黒い点はスティグメ帝国艦艇だろう。
「まずは、アームのマギアブラスターでご挨拶だ」
右腕と左腕、それぞれ搭載された魔人機にしては巨大な砲が加速中にもかかわらず、砲身が動く。
ロックオン。目標、敵戦艦!
「くらぇっ!」
俺は
次の瞬間、右腕部のマギアブラスターが眩い閃光を放った。
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