第1102話、対十字架戦
機動巡洋艦『ユニコーン』の艦橋に俺はいた。
先頭を行くは盾である改
「敵の自慢の砲撃も、結界水晶には無効だ」
『
「そしてそのまま、『剣』が突っ込めば、敵は結界水晶で防御するしかない。逃げようとしても、足の速い『剣』からは逃げられん」
結界水晶防御同士が激突しても、艦艇にはダメージはない。が、解除したら、その時はもう片方の結界展開艦の体当たりを食らうことになる。
結界を使っている間は、内側からの砲撃もできない。つまり無敵の防御と引き換えに、手も足も出せなくなるのだ。結界水晶防御の欠点とも言える。
「まあ、無敵の防御ではないんだがね」
俺は口元を
十字架よ、てめえの運命も残りわずかだ。
「マスター」
艦を制御するコアであるサフィロが、涼やかな声で報告した。
「敵の護衛艦が、迎撃ポジションにつきました」
「こちらも、敵クルーザーを相手をしよう。ベルさんが右のクルーザーをやるから、本艦と『エイジャックス』は左のクルーザーだ」
いいね、ベルさん――俺が魔力念話を飛ばすと『おう!』とベルさんの返事がきた。
『ユニコーン』の格納庫から、ベルさんスペシャルであるブラックナイトが発進した。……いつ見ても、禍々しいねぇ、ベルさんの機体は。悪魔の黒騎士ってか。
「目標、敵クルーザー」
「前方、各砲、射撃開始!」
15.2センチ三連装プラズマカノンが、一斉に靑い光線を発射した。敵コサンタ級クルーザーに、『ユニコーン』と
耐久力に定評のある敵重巡だが、1隻で複数の巡洋艦の火力を誇る『ユニコーン』の猛撃は防ぎきれない。
その間にも、突進を続ける『剣』は、十字架の砲撃を物ともせず距離を詰めていた。結界水晶防御がなければ、体当たりしようとしているように見える。
いや、実際にそのつもりなのだが、これに対して十字架もまた正面から向き合った。自身の結界水晶防御によほどの自信があるのだろう。
……でもこれ、『剣』が結界解除して突っ込んだら、おたくも吹き飛ぶことになるってわかってる?
剣以下、生駒級巡洋戦艦の艦首って、例のミサイルと同じ材質なんだけどね。まあ、戦艦一隻を同じく戦艦で相打ちってのは、俺の趣味じゃないからやらないけど。
「『剣』、敵十字架と激突!」
狙い通り、双方の結界がぶつかり合って、つばぜり合いのような状態になる。『剣』と十字架で押し合い状態。
「ようし、仕上げだ」
俺は、軽巡『ネフリティス』と
巡洋艦をも打ち砕くヘビープラズマカノンの直撃を受ければ、小型フリゲートなどひとたまりもない。
『ネフリティス』に守られてきた四隻の駆逐艦は、必殺の対艦兵装の発射位置へと移動する。
軽巡洋艦が火力支援し、駆逐隊が突っ込むという、旧海軍における理想的な水雷戦法だ!
『「ハツカゼ」、対艦ミサイル発射!』
観測員の報告。神風級駆逐艦の艦首の大型ミサイル発射管から四発の例のミサイルが放たれる。
魔法文明艦艇の特殊装甲を弾頭に用いたミサイルだ。結界水晶防御の影響を受けない魔法文明艦艇のそれを使った特別製である。
『「ユキカゼ』、ミサイル発射!』
『「アマツカゼ」、続いて、「トキツカゼ」ミサイル発射!』
ワンテンポずらして、四隻の駆逐艦、計十六発の大型ミサイルが煙を引いて、十字架めがけて飛翔した。
『剣』と押し合いをしていた十字架は、展開していた結界のせいで対空防御を取れない。
飛来した大型ミサイル、まず初風の四発が結界に到達した。青い結界の幕をくぐり抜けた瞬間、ミサイルは爆発した。
それは、シールドを破れなかったように見えた。
「マスター!」
サフィロが、特殊弾頭ミサイルが効かなかったのでは、と不安げな視線を向けてきた。だが俺は動じない。
「結界の裏に通常の防御シールドを張っていたんだろうよ」
いわゆる二重防御。攻撃は通らない結界だが、その裏側にもう一枚別の防御手段を展開することはできる!
「が、それは想定済みだ。だからミサイル発射のタイミングをズラしたんだ!」
直後、雪風のミサイルが結界を突入。が、これも壁に阻まれたように爆発。
だが、続く天津風の大型ミサイルが結界を突破すると、今度はそのまま十字架の艦体に命中。炎を拡散した。
「よし!」
防御シールドは、初風と雪風のミサイルの爆発でエネルギーを失ったのだ。そして最後に時津風のミサイルが十字架に着弾すると、右舷側から激しい爆発と黒煙をあげながら、傾きだした。
すると押し合っていた『剣』の艦首がズレた。十字架の右舷側をさらにゴリゴリと削って、そのまま突き抜けた。
十字架は制御を失い、崩れるように傾いて墜落、眼下の森林に激突して大爆発を起こした。
『敵戦艦、
よし、『長門』と『陸奥』の仇はとった。さて、残る敵は……と、おっと、そっちも終わりそうだ。
ベルさんのブラックナイトが、敵クルーザーから迎撃に上がったリダラタイプ魔人機を槍型のビット兵器で撃墜すると、胴体から強力な光線兵器を使って、敵クルーザーを一撃で貫き、轟沈させていた。
ほっ、あれ、T-Aにあったマギアブラスターか? スーパーロボットの超ブラスターと同等の攻撃をブラックナイトが使った。あれが、ベルさんの言っていた試したい新装備ってやつか。
魔人機サイズで、マギアブラスターを使ったとなると、こいつはヤベぇな。シード・リアクターを積めないサイズだから、ベルさんの魔王パワーなんだろうけど、あれだけでスーパーロボット並の火力を有しているってことになる。
こりゃ素で魔神機にも負けないな、ブラックナイトは。
「マスター」
サフィロが艦長席の俺に振り返った。
「敵艦隊の全滅を確認いたしました。友軍の損害は軽微との報告です」
「ごくろう。ではこちらも撤収しよう。……ちなみに、損害というのは?」
「『ツルギ』から、外装は無事なれど、衝突の衝撃で一部機器に異音ないし、動作不良が発生、とのことです。航行、ならびに戦闘に支障なしだそうです」
十字架と激突した時か。結界同士の激突は思いのほか、衝撃が大きかったらしい。
「了解だ。警戒しつつ、速やかに戦域を離脱せよ」
「承知しました」
結界水晶防御を利用した体当たり戦法用に試験している『剣』だが、これはこれで改良点が出てきたのは収穫だった。
まあ、一番は、敵の新型戦艦を撃沈したことだけど。
我々の完全勝利だ。
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