第1072話、ぼくがかんがえた戦艦はチートですか?
スーパーバトルシッププラン。
ディアマンテ級戦艦をベースにしつつ、ユニコーン級機動巡洋艦やコサンタ級重巡洋艦の要素も加えた新型戦艦案を、俺はディーシーに披露した。
結界水晶式シールド、高性能ステルス、艦載機運用能力、自力での転移機能などなど。さらにそこで運用する新型の――。
「ポータル機能を使った新型偵察機だと……?」
「パイロットには魔力に優れた者が必要、というのがネックではあるだけどね」
魔法文明の魔人機は、そのパイロットの魔力も機体性能に少なからず影響を与える。それを新型偵察機にも応用するつもりだから、パイロットを選ぶ機体となるだろう。
「簡単に言うと、ポータルを積んだ偵察機を飛ばして、攻撃隊を敵の想定外の方向から送り込んだりするんだけど――」
俺はデータパッドの戦艦の図を指し示した。
「こいつに超電磁砲――レールガンを積むつもりだ。そこから放たれた超高速弾をポータル経由で直接送り込む。実現すれば、敵がまったくこちらを発見していない超長距離からの砲撃が可能になるという寸法だ」
超長距離狙撃。ポータル偵察機――これにも完全ステルス機能を盛り込むが、これが観測とポータルの角度を調整することで、敵の死角から回避不能の攻撃を叩き込むことができる……というのが、机上で考えた代物である。
「レールガンでなくても、通常のミサイルだったり、魔導放射砲だったりを送り込むことも考えてる」
バニシングレイに匹敵する一撃が、ポータルを通過して敵に襲いかかる……。実用化されたら、さぞ恐ろしい兵器となるだろう。
「で、こっちの武装だけど――」
主砲は六基。副砲に、ディーシーが作り上げたヘビープラズマカノンを対艦・対空装備として連装八基。シールド状構造物内に先の超電磁砲を一門ずつ計二基、十連装防空レーザー砲四基を内蔵。
艦首と艦尾にミサイル発射管四門×四の計十六門。ほか、艦体各所に三連装ミサイルランチャーを十数基、十連装のVLS(垂直ミサイル発射システム)を八セット。
なお、このミサイルは、すべてクリエイトミサイル――魔力生成式
艦の各所には対空砲を多数設置。航空機や飛行型魔人機などの襲撃から防御する。
「魔導放射砲を艦首に三門、シールド状構造物に一門ずつ仕込むから、一度に五発を同時発射可能だ」
「主は、島ひとつを
ディーシーさんもびっくり。
「いやほら、大帝国が四百隻も艦を出してきただろう? 一度に全部戦うことはないけどさ、仮にそうレベルの数と戦うかもしれないって想定したら……ね」
あり得ないけれども、そのあり得ないが万が一ということもないとも限らない。
魔導放射砲は、弾数制である。某決戦砲みたくエネルギーを充填する必要もないから、同時に複数を使用しても、艦の運用に支障はない。
「ちなみに主よ。この戦艦の主砲は、口径が記されていないが、どの砲を載せるつもりなのだ?」
ディアマンテ級、ドレッドノート級は35.6センチ砲。土佐級突撃戦艦は40.6センチ砲。大和級は45.7センチ砲である。
「超戦艦というからには、45.7センチ砲か? 確かテラ・フィデリティアの最大は50.8センチ砲だったはずだが……」
「現状、四タイプの
「換装、だと……?」
ディーシーは困惑した。
「主砲を換装と言ったか? 戦場で載せ換えでもするつもりか?」
「ユニコーン級でさ、艦の内部スペースを確保するために異空間収納を使って、砲塔のサイズを誤魔化しただろ? あれにちょっと転送機能を加えて、ボタンひとつで主砲を換装しようって思ったんだ」
「戦場での主砲換装だと……! 前代未聞だ」
「うん、俺もちょっと見たことがない」
ただ魔法を応用すれば、できるはずなんだ。ディーシーさんの、テリトリー内転送を使えばね。
「ターレットのサイズを共通にする必要があるから、40.6センチ三連装、45.7センチ三連装、50.8センチ連装、150センチ魔導放射砲の四つだな」
「待て……いま150センチ魔導放射砲と言ったか?」
「言った」
俺は頷いた。
「使い捨て装備なんだけど、換装・交換できるなら魔導放射砲を主砲ターレットに置くのもありかなと思って」
「……」
ディーシーさん、絶句。無理もない。
ただでさえ決戦砲である魔導放射砲を五門も装備している超戦艦案である。そこに計六基の主砲すべてを魔導放射砲に換装したら……?
射線の問題から、全門をひとつの目標に向けられないが、正面ならば前部の主砲四基と最初から装備されている五門を合わせて九発の同時使用が可能。
また艦首五門を使わずとも、砲塔式の六基は側面への指向ができるので、そちらへは六発が同時に撃てる。
「ポータル経由なら、目標に、全部当てることができるだろうね……」
でもまあ、よっぽどのことがないと使わないと思う。
「通常戦闘は40.6センチ砲や45.7センチ砲を使うだろうよ。個々の対艦戦闘だと、魔導放射砲はオーバーキルだからね」
とはいえ、この破格の攻撃力こそ超戦艦と呼ぶにふさわしい。
もっとも40.6センチ砲と45.7センチ砲でも、充分強力だが。
ディーシーは嘆息した。
「もう、これ一隻があればいいんじゃないか?」
「そうだよ。超戦艦と名乗るくらいなんだから、それくらいの性能がないと詐欺だと思うよ」
俺は真顔である。
「攻撃力は破格だが、戦艦を名乗る以上、防御力も重要だ」
何せ、交戦距離において、自艦の主砲に耐えられる装甲がなければ戦艦の定義に当てはまらない。
「主装甲区画は、スーパーロボットにも利用しているブァイナ鋼とダンジョン壁の複合材を使う」
推定バニシングレイに耐える超装甲あれば、結界水晶や各種防御障壁と相まって、ほぼ無敵に近い防御力を確保できるだろう。
攻・防、そして機動力を支える機関には、ほぼ無限の魔力を生み出す、世界樹の種子を用いたシード・リアクターを搭載する。
ひと通りの性能を確認したディーシーは苦笑を浮かべる。
「艦艇用のシード・リアクターは、ディーツーがいくつか試作していたから、実用化もさほど時間がかからんだろうな。……しかし、この超戦艦が完成したら、スーパーロボット以上の騒ぎになる」
「だろうね」
俺は顎を撫でる。
「これを本気で作ろうとしたら、魔力生成でパーツを作り上げたとして、どれだけの魔力コストがかかることやら」
だから、ここにあるのは妄想。実際にやったら机上の空論かもしれない、お遊びの類いだ。いくつか応用できる技術はあるが……いや、それらの技術をぶちこんだので逆か。
ディーシーが笑った。
「確かに凄まじい魔力コストはかかるだろうが、一、二隻を作る程度なら問題あるまい。何せ魔力に関しては、世界樹の種子があるのだ。実質、ウィリディスに世界樹があるのと同義なのだからな」
お金がないから無理、と思っていたら、そのお金が湯水の如く使えますよ、ときた。
お遊びで書いた妄想が、動き出す。ダンジョンコアのディーシー、そして機械文明時代の技術を有するディアマンテが、ウィリディスにはいたからだ。
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