第417話、古代ダンジョン?
敵性ゴーレムと、シェイプシフター兵が交戦した場所に到着した時、地面には、その敵性ゴーレムが、四肢をバラバラにしたような格好で横たわっていた。
「よくやった」
シェイプシフター兵、やるな。初見でゴーレムを撃破だ。
魔法装甲車デゼルトから降りると、すでにユナとサキリス、他にもシェイプシフター兵たちが集まっていた。
さて、その撃破した謎のゴーレムであるが、その身体を動かすゴーレムコアは、シェイプシフター兵の一人が両手で抱えて、本体より切り離している。
「どうやって倒した?」
『はい、敵は動きが遅かったので、背後に回りました。そのまま上半身と下半身の間の空間に手を突っ込み、コアを切り離しました』
「さすが」
ゴーレムの倒し方を心得ているな、シェイプシフター兵は機械的な調子で答えた。
『魔法銃も刃物も、敵の装甲が強固で抜けませんでした』
「ゴーレムだもんな」
ほとんどの場合、頑丈で生半可な攻撃が通じない耐久力を誇る。まあ、俺やベルさんは別だけど。
そんなゴーレムだけど、大抵はそのゴーレムを動かすコアを潰せば倒せる。……はて。
「銃でコアを撃たなかったのか?」
一応、弱点となるコアが剥き出しになっているから、そこを狙い撃てばよかったのでは、と思った。
「魔法銃でコアを直接撃たなかったのか?」
『一、二発を耐えた上に、近接戦になりましたので』
ああ、踏み込まれていたら、銃で一点を狙い続けるのは難しいかもしれないな。それは仕方ない。
「主様」
いつの間にか、シェイプシフター魔女のスフェラが来ていた。
「ゴーレムが出てきた場所がわかりました。近くに洞窟のような裂け目があり、そこから先が地下ダンジョンになっております」
「ダンジョン」
噂をしていたらこれだ。思わず天を仰ぎたくなる。
スフェラが続けた。
「様子見に斥候を送りましたが、入り口付近にゴーレムが集結しつつあり、こちらの侵入を阻止する構えです」
出てくるわけではなく、守りを固めているということか。なるほどね。比較的近くにカプリコーン軍港があっても、気づかれなかったわけだ。引きこもっていれば、わかんないもんな。
ダンジョンの配置がゴーレムタイプということは、かつてはダンジョンマスターがいたタイプだろう。今も生きてこいつらを操っているのかはわからないが。
何せゴーレムは命令に対して忠実。機械さながら与えられた命令を、主が死んだ後も実行する。
ダンジョンが無人で、ゴーレムが命令どおりの行動をしたと言うのなら、シェイプシフター兵が近づいたところで、迎撃に出てきたという線が妥当か。なら近づかなければ、交戦も避けられるか……。
とはいえ、一度敵性存在を見つけると、兵力を整えて攻めてくる、とかそういう命令とか持ってたらだったらどうしようかね。放置しておくと逆に危ないということになるが。
「ジン、どうするんだ?」
ベルさんが聞いてきた。
マルカスも盾とハンマーを準備しながら俺を見る。なお、先日俺が用意したホワイトオリハルコン製の武具でその装備は統一されている。
「結局は行ってみないとわからない、ということだな」
「ジン?」
アーリィーに、俺は笑みを向ける。
「探索しよう。危険の芽を放置するわけにもいかない」
今のところ、ダンジョンで確認されている敵はゴーレム。表に横たわっているそれは、上半身と下半身、腕と足のパーツが分かれているが、構成されているパーツは金属製だ。
アイアンゴーレムの亜種だろう。通常攻撃に対して強い耐久性を誇る。その金属アームで殴られたら、即死モノだろう。近接戦は避けるのが被害を少なくするセオリーだな。
そうなると、魔法やコアを狙った投射武器がいいだろう。ただし、魔法銃もそこそこ連続して撃ち込まないと駄目そうだが。
アーリィーは、新型魔法銃ディフェンダーを武器に、ホワイトオリハルコン製の軽鎧と、こちらも装備を一新している。
サキリスは例によってシェイプシフター武具。ユナも蹂躙者の杖を持つ以外、いつもと同じ魔女の三角帽子にローブ姿である。
今回はそれに加え、漆黒の魔女姿のスフェラ、魔法銃とショートソード装備のシェイプシフター兵を一個分隊、スクワイアゴーレムのブラオ、グリューンが随伴する。
木々生い茂る森、そのすぐそこに裂け目が地面に走り、そこにダンジョンの入り口があるという。
当然ながら、車は入れないので徒歩で移動する。歩いて三分、ほんと近くだったな。
「……なるほど、裂け目だな。こりゃわからん」
ベルさんは皮肉げに笑う。確かに一目見ただけじゃあ、入り口としては非常にわかりにくい。
ここから先は、このダンジョンのテリトリー。先導にシェイプシフター兵が入り込んでいるはずだが……。
いた。裂け目をくぐって、進んだ先は、緑がかった石造りの大フロアが広がるダンジョン。
長方形のその部屋は高さが五メートルほど、奥行きは30メートルほどだろうか。照明はなく、本当なら真っ暗闇のはずだが、緑の床や壁がわずかに発光しているのか肉眼でも室内を見ることが出来た。
SS兵が三人、こちらに背を向けている。ひとりは隊長を示す記号付きマークをつけている。
「よう、ガーズィ。どうな様子だ」
『あちらを』
その視線の先には、無数の光点がよりはっきりと人魂のように浮かんでいる。
このダンジョンの守護者たち。ゴーレム――その目となる部分と、ゴーレムコアが青く光っているのだ。
「なるほどね、あれを突破しないと先に進めないわけか」
俺はガーズィら先導のSS兵の傍らに立つ。
「せっかく、向こうから弱点を発光させてくれているんだ。遠距離から仕留させてもらおう」
俺が言えば、アーリィーがディフェンダーを、SS兵らが横列に展開して魔法銃を構えた。
「撃て」
魔石から放たれた電撃弾が一斉に空間を裂いて、ゴーレムたち、そのむき出しのコアに殺到した。
先制攻撃で倒れたゴーレムは五体ほど。アーリィーのディフェンダーはきっちり一撃で一体仕留めたが、シェイプシフター兵たちの魔法銃には連続してコアに叩き込まないと破壊できなかった。
狙われたコアを自らの腕で庇いながら、残ったゴーレムたちがのしのしと前進を始める。……しかし、上半身と下半身が分かれているのに、よくもまあ、上が落ちずに下半身の動きについていくもんだ。
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