第223話、3人に打ち明けた
「これから見せるのは、他言無用な」
俺はそう釘を刺して、ユナ、サキリス、マルカスをポータルで導いた。
「ここが俺たちの秘密基地だ。そしてここにあるのが、先日の王都襲撃の際、魔獣群を攻撃した兵器だ」
「こ、これは……!?」
3人は驚いた。
金属の壁、天井。その下に置かれた、鋼鉄の巨人である魔人機。戦車、そして航空機。当然ながら、皆、ポカンとしている。
同行したアーリィーとベルさんはニヤニヤして、初遭遇の3人を見守る。
「まあ、わかるよ。何が何だかわからないのはさ」
特に、予備戦力として待機していた学生組であるサキリスとマルカスは、戦場を見ていないからね。目の当たりにしたユナでさ、その実際の形ははっきり見えていなかっただろうし。
そのユナが、あの戦いで起こった理解不能な事象について、俺に聞いてきたからこうして見せているわけだけど。
「敵集団の後方で爆発が起きたのは、あの戦車の載せている大砲が放った砲弾の命中によるものだ。で、聞き慣れない稲妻のような音と共に空を駆け抜けたのが、あっちにある戦闘機だ」
と、軽く機械兵器について軽く説明する。これらは主に古代文明時代の兵器を参考に作った――と、嘘も交えて説明する。
魔人機については嘘ではないが、戦車や航空機は、異世界人である俺の世界での兵器だからね。
「古代文明時代の兵器……」
ユナは目を輝かせる。
「このような金属の物体が動いたり、空を飛んだりしていたのですか……!」
まあ、テラ・フィデリティア航空軍という、ディアマンテが存在した時代には、航空機より遥かに巨大な空中戦艦などが飛んでいたので、間違ってはいない。
「そう、大昔に栄えた超文明の遺産さ」
「ジン」
マルカスが魔人機を指さす。
「あれも、人が動かすのか?」
「乗れるぞ。見るか?」
魔人機のコクピットへと案内する。ユナは、6メートル近い巨人を見上げる。
「人が操縦するゴーレムですか?」
「まあ、そうだな」
ファンタジー世界の住人らしい感想だ。だが人型なんて、この世界じゃゴーレムで片付けたほうが説明の手間が大いに省けるところだ。
「この魔人機は、魔獣群との戦いではどのように貢献を?」
「残念ながら、出番はなかった」
戦車と航空機、そしてダンジョンコアを使ったテリトリー制御で敵を
「出番がなかった?」
マルカスが首を横に振った。
「強そうなのに」
「お前たち学生と同じ、予備隊として待機はしていたんだけどな」
「あの、ジン君?」
サキリスが周囲の兵器群を見回した。
「ここはいったい何なのですか?」
「なにって、秘密基地?」
皮肉っぽく言えば、サキリスはわずかに眉をひそめた。
「ここにある兵器は、見たことも聞いたこともありませんわ」
「そりゃ、秘密だもの。知らなくて当然さ」
「王族の絡む国家機密ですからね」
ユナは、最初に打ち明けた時の俺の言葉を繰り返した。
「まだ表に出てきていない兵器。それゆえ、今回の戦闘でも、人目につかないように用いられた」
よくわかっていらっしゃる。もっとも国家機密ってのは嘘なんだけどね。でもアーリィーが絡んでいる以上、王族の関係した秘密というのは間違ってはいない。
「ですが……何故、王国はこのような古代兵器を」
サキリスは物憂げな表情を浮かべる。国家機密と聞いて、恐ろしくなったかな。
「これらの兵器は、近いうちに降りかかる災厄からこの国を守るためのものだ」
「災厄……?」
サキリス、ユナ、マルカスの顔に緊張が走る。
「お前たちは、ディグラートル大帝国の名前は知っているかな?」
学生ふたりは顔を見合わせる。ユナが軽く挙手した。
「大陸北方の大国ですね。大陸の支配を掲げ、近隣諸国を侵略、いまは東の連合国と戦争をしていると聞いています」
さすが教官、いやAランク冒険者。諸外国のことも少しは知識があるようだ。この世界にはテレビもインターネットもないから、自分たちの住んでいる国以外のことには疎い人間が多い。いや、自分の国のことすら知らない人間も多いのだ。
「その大帝国は三カ月ほど前に滅亡の瀬戸際だったんだけどな――」
俺やベルさんが、味方の連合国に裏切られたまさにあの日を境に形勢は逆転した。
「大帝国は、古代文明兵器、つまり魔人機や空中軍艦を戦場に投入して、連合国の軍勢を蹴散らした。連中は、いま東を目指しているが、この西方諸国にも侵攻しつつある」
俺はユナを見る。
「ヴェリラルド王国の北、シェーヴィル王国は知っているな? 大帝国はそこまで侵略の手を伸ばしている。シェーヴィルが陥ちれば、次はもちろん――」
「このヴェリラルド王国」
「!?」
マルカス、サキリスの顔が強ばった。俺は魔人機を見上げた。
「こんな巨人の軍隊が攻めてきたら、既存の軍隊じゃどうにもならないのは、想像がつくだろう。俺たちはそれに備えて、対抗できる準備をしているんだ」
「本当なのですか、アーリィー様」
サキリス、そしてマルカスが、自分たちの国の王子様へと向く。アーリィーは頷いた。
「うん。実際、大帝国の工作員が、この国にちょっかいを出している。あちらにある魔人機――」
彼女が指したのは魔人機のドゥエル、そしてカリッグだ。
「あれは大帝国製の魔人機を
絶句する学生たち。ユナが『本当ですか?』と伺うような目をしたので、俺も頷きで返しておく。
「マルカス、そしてサキリス。お前たちが学校を卒業する頃には、その戦争が始まるかもしれない。王国を守るために戦う覚悟はあるか?」
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