五話目

「おっさんあれだね、えと…イッポ―コーなのにカンケイセイにチャクモクするんだね。ツウだね」

 あかん。難しい言葉が脳内でカタカナに変換されてしまう。


「えっとな、舞台が狭いなと思ったんだ」

「…」

 無反応か。

「要は、その、踊りが見たけりゃ劇団四季にでも行けばいいし、ストーリーが見たけりゃ映画を観に行けば良いんだ」

「うん」

「でも……ストリップは、その、裸を観に行く所じゃないか……だから、こう、舞台が、狭くても…」

「でも舞台が狭いのとあんま関係なくない?」

「…ソウダネ」

 ソウナノダ。ちょっと若者っぽい語尾に打ちのめされそうになる。

「でもアタシも思った。秘密にしときたい、隠したいから、あんな小さいとこでやるのかなって」

 

「あ、でも、訴えないでね、一応、裸を見せるくらいだったら法律的にはセーフなはず」

「えうそマジ?」

「う、うん」

 その口調はちょっとびびる。

「現代の話だよ、おっさん!?」

「うるせえ現代に生きとるわ」

「おっさん100円札とかあった時代の人?」

「う る せ え !」

 彼女がからからと笑った。しかし急に語調を落として、

「そ、そーなんだ…へぇ…」

「逆に君は法を犯してる気になってたの」

「い、いや、気にしてなかった」

「しかも他人を共犯にして」

「保護者だよ保護者!」

「はぁ」

 保護者同伴の犯罪行為か。普通にまずいが、これ以上追究せんどこ。


「…そうだなあ。悲しいことだが、単に事業が収縮してしまってるのかも知れない」

「でも昔は大人気だったんじゃないの」

「鋭い」

「え、正解?」

「正解だと思う」

 別に私が個人的に行ったことは無かったが、詳しくは言わない。というか調べてなかったのか。

 大繁盛していたらしい。ストリップは。昔は、という前置きはつくが。

「全部が全部今日行った所みたいな感じでは無いと思うけど」

「だよね。ほんと何であんなに狭かったんだろうね?」

 と、彼女の言葉の途中で、なんとなく気づいた。これは先生と、生徒だ。

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劇場版 HUDi @HUDi

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