第8話
いつも通りの仕事を終わらせ、初穂は帰宅する。
テレビの電源を入れ、スマホから音楽を流し、新しい生活に体を慣らしていく。
それでも、慣れるまでにはまだまだ時間がかかる。
様々な音に囲まれながら、キッチンに一人立ち、一人分の夕食の支度をする。
今まで、二人分を作っていたせいか、単純に半分にすればよいという計算が意外にも難しい。
それに、彼はたくさん食べてくれたのでそれも計算を難しくさせる要因かも知れない。
それでも、慣れた手つきで食材を切り、手際よくこなしていく。
一人分の食器を用意して、黙々と食べていく。
誰とも話す事なく、食べる食事は思いのほか早く終わり、時間を持て余した。
食べ終えた食器を洗うと、初穂はコートを羽織り家を出た。
夕暮れが夜に変わるのにはまだ時間があるように思えた。
初穂は、辺りを見渡しながら、まだ新しい外壁や、経年劣化の被害を受けた塗装など、左右に首を振りながら歩いていく。
行きつけのお店も、二人でおいしいねって言ったお店も、可愛い雑貨で溢れた秘密のお店も、この町には二人の思い出が詰まりすぎている。
まだ、子供の遊び声の残る公園に着いた。
歩きながら、考えると思いが纏まらず、堂々巡りが続く。
二人分のベンチに一人座った。
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