第4話

「それで何があったの?」

「それが…」

初穂は昨日の出来事を隠さずに全部話した。

自分でも冷静なくらい淡々と話していた。

口にすると、気持ちは少し軽くなった。

「なにそれ!?サイテー‼」

机をドンと叩いて涼子は声を荒げた。

「やっぱり。そうだよね。」

「そんなクズみたいな男と別れて正解だよ。初穂はなにも悪くない。」

「うん。でも…」

「でも?もしかして、まだ好きなの?」

「よくわからないけど、まだ気持ちの整理がつかなくて」

「まぁ昨日の今日だもんね。ゆっくりしようか。」

そう言うと、プリンのフタを開けて一口食べた。

初穂も一口食べる。

「あ、これおいしい。」

「でしょ?最近発売されたみたいで、つい買っちゃった。」

「涼子らしいね。昔から甘党だもんね。」

「まぁね。でも、少し元気が出たみたいで良かった。」

「ありがとう。」

涼子のプリンはいつの間にか食べ終わっていた。

「これからどうしようか?」

「うーん。何も考えてない。」

「なにそれ。」

二人して笑った。

テレビを見ながら、占いコーナーに一喜一憂したり、最新映画情報を見て、面白そうとか、一緒に観に行こうとか、グルメ情報を見ながら美味しそうだねなんて、あの頃もそんな会話してたっけ。

「よし。初穂が前向けるように協力しよう。」

「協力?」

「うん。見たところ今の初穂には要らないものが部屋に溢れてるな。」

「あー。そりゃね。私もどうしようかなって考えてたんだけど。」

「とりあえず、一つにまとめない?」

「そうね。なんか涼子来たら自然と元気出る。」

「あはは。やけに素直だね。」

「こういう状況だからね。」

こうして二人は、部屋にある二人の思い出を箱に詰めていく。


要らないものがはっきり分かっていると、箱詰め作業は意外と簡単だった。

「ふぅー。こんなもんかな。」

「終わったね。」

二人の思い出は集約すると段ボール一つ分になった。

記憶はまだ私の心を隙間なく埋めているのに。

ソファに座り、置いておいたカフェオレを口にした。

涼子は、部屋の窓を開けた。

9月の風がカーテンを揺らしながら入ってきた。

「そして、空気の入れ替え。これで部屋に新しい空気を取り入れる。」

「ありがとう。」

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