第2話
静寂を切り裂くアラームが鳴った。
停止し、時間を確認しようと、スマートフォンに手を伸ばす。
画面は6:30と表示されている。
まだ寝ていても良かったがそういうわけにもいかない。
今日は、昨日の物語の続きを書こうと決めていた。
ノートパソコンの電源を入れ、文字を打ち込んでいく。
朝の静かな時間はやはり集中できる。
昨日の停滞が嘘のように一気に物語が動き出し、自然と湧き出る言葉を次々と打ち込んでいく。
僕の中のもう一人の自分に支配されているみたいに、考えると同時に手が動いていく。
もはや、一種のトランス状態といってもいいくらいだ。
こうした時間を過ごし、物語は終わりを迎えた。
手を上に伸ばしながらふうぅっと深く呼吸し、長い支配から解放された。
スマートフォンに軽く触れ、時間を確認した。
8:53と表示されている。
気分転換にどこかへ行くにもお店は開いていないし、このままもう一度寝るにはもったいないと感じていた。
どうするか、悩みながら何気なくテレビをつけた。
女性アナウンサー、タレント、芸人、あらゆるジャンルで活躍する人が、当たり障りのない会話を広げていた。
新オープンのカフェの映像が流れ、朝食を食べていないことを思い出し、トーストが焼ける間にコーヒーをカップに注いだ。
それから、トーストにバターを塗り、テレビを見ながらかじりついた。
続いては、最新映画情報です。
女性アナウンサーの声と共に、画面は今週公開の映画の予告編が流れた。
「あっ!」
大きく声を上げた。
そこには、昨日空港で見たあの男の姿あった。
赤羽賢人。
予告編は終わり、試写会でのトークイベントの様子が流れて,笑顔と一緒に誰もが使う、何百回と聞いた宣伝文句を口にしていた。
ふと、昨日と同じ感情が湧いてくる。
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