第1話
「キャー。こっち向いてー。」
黄色い歓声を浴びながら、空港の通路を一人の男が颯爽と歩いてきた。
空港に集まった多くのファンに軽く手を上げながら、歓声に応えていく。
「賢人くーん、サインちょうだい!」
そういったファンにも快く応じていく。
そう、これが赤羽賢人。
いま最も注目されている、若手イケメン俳優である。
「顔が良ければ俺もこんな風になれるのかな」
そんな彼をを横目に見ながら、心の中で呟く。
そう、これが山寺修一。
この物語の主人公である。
六畳一間の領土に住み、出版社から貰った少ない給料から家賃を払い、残った予算で暮らしている。
「ふぅー。今日は一段と疲れた。」
リュックを床におろし、すぐにお風呂を入れた。
その間に夕ご飯の支度をする。
食べ終わって、少しゆっくりした後、お風呂へ向かった。
お風呂から上がると、机の上に一台のノートパソコンを置き、電源を入れ、書きかけの物語の続きを打ち込んでいく。
目の前に広がる、物語の続きをどうするか悩んでいる。
「うーん。」
思いついた言葉を、打っては消し、打っては消しを繰り返している。
多分、キーボード内使用回数第一位はBack spaceキーだろう。
そんな事を思いながら、電源を落とした。
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