第10話 天照の降臨

すごい美女が岩の上に座っていた。

あまりに綺麗な顔立ちに一瞬で酔も冷めてしまった。

だって、なんか光ってるし、てか、なんだろう。どう表現したらいいんだろう。

なんていうか、自分の好みをすべてぶちこんだ顔立ちって言えばいいんだろうか。

思わず声が出てしまうような、あまりの美しさに身動き取れなくなるような。

「おい」

実際身動き取れてない俺。あれ???・・・体が動かないんですけど???

「貴様きいておるのか?」

え、何これ?金縛り?やだ、嘘、怖い!

「あぁそうか、縛ったままだったのう」

美女が指を鳴らすと体の自由が戻ってきた。

その場に崩れ落ちる。

「痛い!・・・な、・・・なんだ!?」

動揺が隠せない、なんだこの状況は?

美女は俺を見下しながら話を進めようとしてくる。

「先程から貴様に聞いておるのだ。この御神体に向かって何をしてくれたのかと」

御神体???御神体ってなんだ???

「御神体って何??てか貴女は誰??なんでなんか光ってるの??てかなんで

時間というか、全体が止まってるの??」

酔は冷めたが頭はパニックのまま、なんとか声が出たので思った事をただ口にだす

子供みたいに質問をぶつけまくった。

「うるさいのう。いちいち喚くでない。妾が聞きたいのは、なぜ神聖な御神体に、

汚物を撒き散らしたか。それだけじゃ。」

・・・

・・・

・・・

えっと、とりあえず、落ち着こう、落ち着け俺。深呼吸を2回ほど繰り返し、

頭を冷静にする。大丈夫、こういうときこそ冷静にって誰かが言ってた。

「おけおけ、聞きたい事がやまほどあるんですけど、とりあえず御神体って何?

てか、貴女は誰?」

よし、冷静に話せている?・・・気がする。声はちゃんと出る。

ひとまずこの美女がなんなのか。そもそも御神体がなんなのか。

たしか神様が宿ってる的な物じゃなかったかな?

「なんじゃ?御神体も知らんのか?無知な餓鬼だこと。」

・・・

なんだろう、きっとこの美女はすごく怒ってるか、すごくSか、すごく性格が

悪いんだろう。だってめっちゃ上から目線だし。いちいちイラつく話し方だな。

・・・

だが、俺も頭が冷静になってきた。偉そうな奴は派遣先の上司に沢山いたしな。

とりあえず怒ってる?みたいだし、謝罪してどうにかこのめんどくさい状況を

抜け出さないと。

媚売りは俺の得意分野だ。気持ちを改め、息を吸い込む。

「本当にすいませんでした!」

まずは誠心誠意の気持ちで謝罪。これが鉄則だ。

「ふむ?本当に悪いと思ってるのか?」

美女が不敵に笑う。  ・・・大丈夫、これからだぜ。

「もちろんです!御神体ってあれですよね!?神様が宿ってる的な物ですよね!?

貴女様がめちゃくちゃ美女だったのでつい気が動転して、支離滅裂な発言、

申し訳ございませんでした。実は酒に呑まれまして、ちょうど吐き気を

感じた時に、たまたまこの立派な岩がご神体ともしらずにやってしまいました。

本当にすいませんでした。謝罪してもしきれません。あとで清掃します!

なんなら他にも出来ることは何でもします!本当にすいませんでした!」

一呼吸ですべてを言いきって、勢いよく頭を下げた。

どうだ!数々の修羅場を乗り越えてきた俺の謝罪術は!

この美女がなんだか知らないが、俺の必殺処世術が効かないわけがないだろ。

と、心の中では一瞬で綺麗にまとめた謝罪文の完成度の高さに拍手喝采が湧いていた

・・・

・・・

・・・

と、いうか、この美女は結局なんなんだ?あれ?もしかして、幽霊現象?

そもそもこの不思議現象は一体何?

遅れていた思考回路も回りだし、頭を下げたまま考え出した時、

「どうだ!数々の修羅場を乗り越えてきた俺の謝罪術は!この美女がなんだか知らないが、俺の必殺処世術が効かないわけがないだろ。・・・とな?」


・・・

・・

・え???


あまりにびっくりしてしまい、頭を上げ、美女を凝視した。

「貴様、本当に謝罪していたんだな?」

美女が不敵に笑う。目が笑ってない。

・・・今、俺が頭で考えていたことを言われた?。

「本当に、謝罪の気持ちがあったんだな?」

美女が不敵に笑う。目が笑ってない。

・・・

サーっと頭から血の気が引いていく感覚。

色々と後回しにしていた状況把握が一気に戻ってくるのを感じる。どうやら俺は

本当にヤバいことをしたようだ。

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