第4話 走馬灯の話
今日で私の人生は終わる。
日課である本堂で祈りを終え、山道を歩きながら、少女は自分の人生を振り返っていた。
季節は夏、新緑が太陽の光でキラキラと光り、澄み切った空の青と重なってとても美しい景色が広がっていた。
セミの鳴き声が、このあともっと暑くなるぞと言わんばかりにがなり立て、暑さを加速させていく。
少女の住む村は、人口300人前後の小さな村。過去に起こった信仰や宗教、思想の違いによる戦争で負け、山間の辺鄙な地まで追いやられたご先祖が、ひっそりとこの一帯に村を作り、自給自足の暮らしをしていた。
「「天照信仰」」
もとはこの国で1.2を競うほどの信仰だったが、戦争に負け一気に廃れかけてしまっている信仰だ。
天照信仰の一つに、「「巫女返しの儀」」というものがある。
信仰では、巫女とは神様から御借りしている神聖な存在。しかし、現世に生きていれば、やがて世の汚れた毒に汚染され、神聖は汚されていく。
なので、巫女が16歳の誕生日を迎えた時、一度巫女を神様に御返しし、新たに汚れなき巫女を御借りする。
村では毎年この時期に「「巫女祭」」という祭りが行われるが、16年に一度だけ、この「「巫女返しの儀」」が執り行われるのが掟であり、風習であった。
巫女はその魂を神様に御返しする為、自ら命を絶ち、心の臓をご神体にお供えする。
その後生まれた最初の女の赤子を次の巫女とし、信仰の象徴として崇める。
そして、今日がその祭りの日。
巫女として使命され、生きてきた。自分は神様から御借りした大事な命。
巫女としての職務を果たし、この命をきちんと御返しすること。それが使命。
今日は、少女にとって最後の1日。
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