第2話 山賊の襲撃(2)
裏口から御堂に向かって必死に山道を駆ける少女。
山の山頂にその御堂はあった。村からは走って20分くらいの場所だ。
季節は夏。夕方手前の空にはまだ煌々と太陽が大地を光で照らしていた。
裏口から逃げたはいいものの、山賊に見つかってしまい、捕まってしまいそうになったが、男衆二人がかばってくれたおかげでなんとか走って逃げ切れた。
しかし、その時男衆二人が惨殺され、その返り血をたっぷりと浴びてしまい、巫女服は真っ赤に染まっている。
ジリジリとした夏特有の暑さが、巫女服についた血の匂いをさらに濃くさせてゆく。最初こそなんとか冷静になろうとしていたが、なぜ?なぜ?という考えが頭を侵食していき、とうとう少女は完全に疑心暗鬼となってしまった。
自分の中の何かが壊れていく。
今朝、この山道を通った時は、新緑と太陽の光が織りなすキラキラとした世界が広がっていたのに、今は、今は。
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私がいけなかったのだろうか?
私がダメだったのだろうか?
私の祈りが弱かったから村が山賊に襲われた?
私の祈りが神様には届いていなかった?
私が巫女として不完全な存在だったから?
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先代の巫女も、その前の巫女も、聞いた限りではとても立派な巫女だったと少女は言い聞かされていた。
災いもなく、村が平和に存在していられた。
なのになぜ?なぜ私の時にこうなってしまったのか?
すべては自分の責任なのか?
負の連鎖に陥り、そして、父と母の断末魔が延々と頭の中で鳴り響き、頭はグチャグチャ。
それでも、涙を堪えながら御堂に続く階段を一気に駆け上がる。
登りきった先に、御堂が姿を見せた。今朝と何も変わらない。
村の方を振り返ると、そこかしこで火の手が上がっていた。その景色は少女にとってこれ以上「こころ」がもたない。
夕焼けに照らされた村は真っ赤に染まっていた。
山賊の姿は見えないが、御堂に逃げろという父の言葉を覚えていればすぐにここに来るだろう。時間の問題だ。
御堂に入り、鍵を閉める。
御神体に向かい合い、返り血を浴びた手を握り合わせ、少女は目を閉じる。
疑心暗鬼をとりあえず頭の隅っこに置き、今はただ、
神様に救いを求め、深く、深く、祈りを始めた。
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