第2話 ユージ

 軽く自己紹介をしておこう。


 俺の名はユウジ。前世での名前だ。


 俺は地球という惑星の日本国という国で生まれ、成人して労働に励んでいたのだが、何をどこで間違えたか過労死する羽目となった。

 気づいたら何もない空間に放り出され、何処どこからともなく声が聞こえてくる。


 なんでも、俺の人生があまりに可哀そうなんで、神様が異世界に転生させてくれると言うのだ。特典として特別な力を一つ与えられるらしい。おまけに前世の記憶も引き継げるという。

 こんなにおいしい話があるだろうか。


 ということで俺は異世界への転生を選択。ディスレインドという世界で再び生を受けた。


 そして……俺はまた死んだ。


 色々あったが、今はあまり思い出したくない。正直、苦労しかしなかった。


 しかし、今回は前回と同じにはならない。俺には特別な力が与えられていたからだ。それは死亡すると自動的にアンデッドになれる能力。


 なんてチートな能力なんだぁ。

 わーい。


「あっ、あんなところにゾンビがいるぞ!」


 墓からはい出たところを村人に見つかり、俺は速攻でボコボコにされ、再生不可能なまでに粉砕されてしまった。

 ところがどっこい、俺は生きて(?)いる。


 なんとこの能力、ただアンデッドになるだけではない。身体が破壊されると魂だけの状態になり、他の死体に乗り移って復活できるのだ。


 たとえそれが小動物だろうが、魔物だろうが、オークだろうが、ゴブリンだろうが、ドラゴンだろうが、どんな死体でも自分の身体にすることができる。

 ある意味、不死の能力と言ってもいいかもしれない。


 この能力を使って新しい白骨死体からだを手に入れた俺は、魔族の領域へと落ち延びる。

 ここには人間の奴隷が沢山いて、死体の補充には困らない。スケルトンを目の仇にする奴もいない。

 やっと安住の地にたどり着けた俺は、夢にまでみたスローライフを堪能するのであった。


 ……とはいかないのがこの物語の悲しい所。


 魔族の領域には7人の魔王がいる。それぞれが領地を持ち、邪神を崇める教団に忠誠を誓い、教皇的な存在から爵位的なものを預かり、封建的に国を治めている。


 何人かの魔王は領土拡大を狙い、何度か人間の領域へと侵攻している。しかし、ことごとく失敗し、大幅に国力を落とし、逆に人間たちに攻め込まれる始末。

 更には勇者パーティーとかいうゲリラを送り込まれ、あちこちでテロが頻発。状況は混沌を極めた。


 こうしちゃおれんと思い立った俺は、思い切って魔王軍に参加することに。

 スケルトンだから怪我しても痛くないし、復活し放題。この能力を駆使して勇者ども地獄の底へ叩き落としてやる。

 そう思っていたのだが……。


 回されたのは裏方。やらされるのは雑用ばかり。

 最初は面倒だと思っていたが、これも仕事だと割り切って雑用を引き受け、24時間体制で働き続けた。


 そして……思わぬところから、出世のチャンスが転がり込んで来たのである。

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