深·ヒノコム
「また会ってくれて本当に嬉しい!」
全身全霊で喜ぶ神様は見た目より幼く見えた。
「私ね、友達とか殆どいないの。嘗ては居たけど縁遠くなっちゃった」
自嘲気味に笑う。この人を放おって置けない。
「ニット帽はお婆ちゃんが編んでくれたの。高校生の時に冬の自転車通学は辛かろうて。お婆ちゃんね、手芸が超絶技巧でニット帽もだけど小さな服なんかも簡単に裁縫してくれたの!本当に不思議の国のアリスに出てきそうな魔法使いのようだった」
神様の独演会だ。
観客は私ひとり。それでいい。
「京香ちゃん、私の言い回し難しいと思う?」
「ううん、私も意識しないと不意に難解な言葉を使って分かり辛いっていわれるから」
「そうなんだ!私たち鏡合わせの似た者同士だ!」
神様が嬉しいなら私も嬉しい。
「我が儘だけど京香ちゃんに本当の私を知って欲しい。だから、独り善がりでも本当の私をみてほしい。でも、顔をまじまじと見られるのはちょっと嫌かも」
神様の世界の窓の外は真っ暗闇。
ひと目で病院と判った。
ベッドで眠る神様と機械は無数のチューブで繋がれている。
忙しく心拍数を映す画面。
鼻を覆う人工呼吸器。
腕に刺さる点滴の針。
お爺ちゃんもこうだった。
でも、今、ベッドで眠っているのは化粧っ気のない神様だ。
「この雀斑…私と一緒だ」
見間違える筈がない。
私は化粧する度にちゃんと見えなくなったか確認していたから。
ずっと眠ったままの神様って私だったんだ。
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