ヒノコムの世界 5
「今晩は京香。最近は暑くて嫌になるわね」
少女の頭の中は疑問で一杯になった。
双子のレンがいない。ムノが明らかに歳を重ねて母性すら滲み出ているのは何故?
「レン?いけない事をしたらお仕置きとして押し入れに閉じ込めるものでしょ?」
レンがなにをしたというのか?
また新しい疑問を挿し込まれて少女は余計に混乱する。
「京香、今回は特別に神様に会わせてあげる」
神様という言葉を足掛かりに記憶の底から神谷さやとのやり取りが浮上する。
「もうすぐあなたは神様と出会う」
神様とは?
神様という言葉をヒノコムで発したのは神谷さやとムノだけだ。
同級生達ともここで何度も会話した。
それでもありきたりな「神様」という普段使いの言葉は一度たりとも出てこなかった。
少女の中でなにかが繋がろうとしている。
神様と口にした神谷さやとムノには自分が知らない関係性がある。
それはなんだろうと考えている内に、世界が変わっていく。
目の前のムノの姿が掻き消えていく。
赤い絨毯が。黒い壁が。巨大な円柱が。
大きな窓から白い日が射し込む。
目を開けていられないはずの明るさにあっても、少女には窓辺で気怠げに腰掛ける人物がよく見える。
白いニット帽を被っている。
青の半袖シャツ。黒いズボン。
少女より少し年上に見える彼女は語りだす。
「ようこそ私の世界へ。私はずっとここにいるの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます