中学三年生の夏休み 2

「だるい…」

ここ数日、炎天下の庭で草を引っこ抜いて、疲れは抜けない日々が続いている。

もうすぐお盆だからってなんで私が。

お姉ちゃん達は車を持っているからすぐ出かけちゃって。

あーあ、やだやだ…。

そうやってお鉢が回ってくるんだから嫌になる。

こうやってお下がりのプリンを食べてジュースで流し込むのが唯一の癒しの時間だ。

「あんた今日、レディちゃんと遊ぶ約束してるでしょ。はよ準備しなさいよ」

分かっているよ。分かってはいるんだよ。


「はぁ?神様を知らないか?」

煙草をふーっと深く吸い込んで吐き出された答えがこれだ。

「神様ねぇ…。それ、誰から聴いた?」

一瞬。ほんの一瞬だけの困惑から全く感情を失ったMotoさんの変化。

初めて見る一部始終。

「あっ…。えっと…。神谷さんから…」

「幽霊少女のねぇ…」

白くなった顔にはっきりと血が通う様子が見て取れた。

「まっ、なんか分かったら姪っ子ちゃんにも教えてあげるわ」

Motoさんの異変から逃れるように私は店をあとにした。


「神様ってなんだろうね…。私達にとっては常にヒノコムにいるあの人の事だって、姪っ子ちゃんは気付くんだろうかねぇ」

Motoはまた煙草に火を着けた。

全く明かりをつけずにいる暗い店内で、魔法少女さしみを流すテレビだけが仄かに辺りを照らしていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る