ヒノコムの世界 4-2
神谷さやは煉瓦の壁にもたれ掛かかっている。
全体が薄暗い部屋で、元から変化の乏しい表情から読み取れるものは皆無。
アーチ型に積まれた水路が並んでいる。
水流の底から突き抜けた光が青い影になって水流に合わせて揺ら揺らと。
「どうしたの?まるで幽霊でも見ている顔をして」
暗闇に揺れる青い影のように輝いていながら希薄な神谷さや。
目を伏せる少女の心は恐怖と混乱が渦巻いている。
「あなたは魂の存在を信じているのでしょう?」
ほんの数日前の記憶。
叔父の店でMotoと話した内容。
「特段、驚愕に値せず。私達は繋がっている故に」
「どうして…?繋がっているって…?」
ほんの瞬きの直前、さやの顔には影が落ちた。
「悲しかった?辛かった?」
「え…?」
「見たのでしょう?」
「やめて…!」
心臓が痛い。
送り出された血液が、血管を削り取る痛みが、全身を苛み、世界が音をたてて崩れ去る感覚を少女は思い出す。
「近々、あなたは神様に出会う」
立ち竦む今村京香を神谷さやは愛おしく抱きしめる。
少女は神谷さやにどこか懐かしい匂いを感じとった。
「京香、これだけは覚えておいて…。この世界の出会いは、決して素晴らしいものばかりではないの…!」
神谷さやを突き抜けた光は、壁に狼のような影を映した。
壁についた水飛沫がゆっくりと繋がって、一筋だけ水面へと落ちていった。
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