中学三年生 真北田レディ

付合いが長いと不思議と分かるんだ。

あっ、レディがくるな。珍しく遅刻しないで。

「グッモやでー皆の衆!」

英語と古風な日本語を混ぜこぜにしたのがレディの挨拶。

私のときと違って皆がレディに注目する。

 ファッション雑誌の表紙を飾ってるだけあるな。

ウェーブのかかった赤茶色の髪を揺らしてまん丸な目は希望に満ちている。

視線を浴びる。恥ずかしがるどころか手を振って応えるのは流石。

歩く姿はどこでもファッションショー。

「おー!京香久しぶりやーん!会いたかったでー!」

久しぶりってあんた。土日の予定が合わなかっただけで大袈裟だな。

こうやって矢鱈と抱きついてくるのは陽気な人間にとっては、挨拶代わりなのかもしれない。

馨ねえもだし。

まあ、違うのはレディも私と一緒で胸が薄い。

要は、力いっぱい抱きつかれると痛い。

「おぉ、よしよし。分かったから一回離して」

「ちょっと待てや。それ、花子をあやすやつやんか」

うん、こめん。本当に離してほしいんだ。

その、周りのさ、男子の羨望と女子の冷淡が刺さるからさ。

鼻がくっつきそうな距離から少しは離れようよ。

「まーたテストの勉強しとるんか。もうええやろ。うちらはうちらや」

笑って誤魔化そうとするな。

「最初から諦めないの。後ろから数えた方が遥かに早いから抜けださないと、学校選べないじゃん」

「あー、京香なら大丈夫、大丈夫やて。うちが保証したる!」

裏付けのない自信はどうやって湧いてくるんだ。

自信で形成された惑星と無限に伸びるホースで繋がる汲み上げポンプでも背負ってるんか。

 こうして、私の自習の時間は潰れた。

朝の会の最初に、紺色のジャケットを羽織り口元にちょび髭を堀川先生が朋ちゃんの欠席を伝えた。

朋ちゃん、新しいクラスが始まって疲れちゃったのかな?心配だよ。

小テストは幸い、空欄は埋められた。

帰りの会で返ってきた結果もまあまあよかった。

なんか、同じ問題が出されたみたいにすらすらと解けたんだよね。

うん、朋ちゃんと勉強した成果が出てる。

頑張ってよかった。

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