日曜日の夜

教科書とノートを視線は行ったり来たり。

辿った跡を実線にして束ねて、重量物も運搬できる立派な架け橋にしよう。通行料金はタダ!

 扉を忙しなく引っ掻く音。続く吐息。

「はな!」

遠吠えのような鳴き声で応えた。

 気が付けば部屋の中は薄暗くなっていた。

勉強に集中して気が付かなかった?まさかね。

単純に気にしていなかっただけだろう。

 花子を連れて外にでる。

私に合せて歩いてくれる。時折、見上げて「本当にそこにいるの?」ってなんだか不安げな顔しちゃってさ。

頭を軽く撫でると安心したのか再び歩む。

 家に戻って出ているついでに、工場で仕事をしてるお祖父ちゃんに「もうご飯だって」と声をかけた。

やっぱり返事はなかった。

 家族揃っての夕食。今晩の話題はミレイさんに声を掛けたことに始まり、私の対応は正しかったのか?の家庭内裁判が粛々と行われた。

結審はお父さんの「友達を思ってのことだ」で、無罪判決を勝ち取った。

意気揚々とお風呂に入って、花子を撫でて、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの部屋で何をするでもなく、一緒にテレビを見て時間を潰した。

 部屋に戻って、机の上に置いた筆記用具とノート、それに棚から明日使う教科書を通学バックに入れる。

「おやすみ」と誰の返事を期待して言っていない。

だけど、やっぱり言ってほしかった。




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