日曜日の昼
目を輝かせて食入る馨ねえの横。私はいたって醒めていた。
5分程でミレイさんの特集は終わった。
女性アナウンサーのアップからスタジオ全体へ切り替わる。
「ねぇねぇ、馨ねえさ。今のさ、黒牟田初郎って人、そんなに有名なの?」
昨日の夕食時と同じぽーんと口を開いたおかしな顔をした。
「まあ、京ちゃんはぁ、アニメばっか見てるから知らなくても無理ないかもねぇ」
大きなお世話だ。漫画も小説も好きで、表紙に書かれた主人公の美貌に惚れてなにが悪い。
おら、今すぐ部屋から400字詰め原稿用紙を持ってきてやるから最低5枚は使って説明してみろや。
馨ねえから見た面も、私を組み立てるひとつに過ぎないと解っていても。
冗談で悪口が含まれていると、やっぱり少し嫌。曇ってしまう。
お腹の底がぐっと重くなるんだ。
「でも、私。その人、昨日見たよ?」
ぽーんと開いた口がばっと。顎外れるか?
目も一杯に。
こうしていても美人に分類されるからズルいと強めの地団駄を踏んだ。
「京ちゃん!本当にこの人だった!?」
スマートフォンを慌てて向けてきた。
伏し目。眉毛が無くて前髪で片目を隠している。服もあの時のまま。
「うん。朋ちゃんの家の前を
眠たげに麺を啜っていた春ねえ。興味がないふりしながら聞き耳を立ててるな。
私の続きを待つ姉二人。
ありがとうミレイさん。貴方と出会った話を
こうして堅城は築かれました。勿論、城主は私。
「はよ話せや」
はい。馨ねえの脅しが効いた声で崩壊しました。
所詮は張りぼての一夜城でした。
これから瓦礫に埋もれた言葉を探しながら話します。
「こんにちはって。そしたら……はい。こんにちはって」
「それだけ?勿体な!」
短く吐き捨てられた言葉に軽蔑の鋭い破片が混じっている気がした。
「やだ京香ちゃん!知らない人に話しかけちゃ駄目でしょ!」
台所から飛んできた母の言葉遣いは小さい子供に言って聴かせるものだった。
正論だけど。
私はこれ以上は話さまいと、殻に閉じ籠もった上に身を硬くした。
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