ヒノコムの世界 2ー2
「それじゃあ気を取り直して」
レンが切り出し。
「今日こそは交流しましょう」
ムノが続ける。
今は無機質でも先刻まで乱れていた双子の姿を見てしまった少女の思考回路は陽炎の如く熱で揺れていた。
無意識に意味のない音を口からする漏らし続けている。加速した血流の摩擦熱が内から肉を焼き、そのうち煙でも吐き出しそうだ。
少女も年相応の興味を持っていた。と言っても姉達に尋ねるのもどう切り出せばよいものかと。それは友人達に対しても一緒で。
家族が留守のうちにインターネットで調べた時は生々しさに驚愕した。
飾りっ気なのない簡素なページに男女のそれが。
瞬時に閉じたが一晩中眠れずに翌日の授業で熟睡。幸い生徒に対して寛大に接する国語の堀川先生で良かったと胸を撫で下ろしたのは先週のこと。
頭を抱えて悶える少女の様子を双子は嬉しそうに見つめていた。
「あらまあまあまあ」
「ほら、落ち着いて」
と言って二人して少女の背中を擦ったのが逆効果。
寝間着の上からでも感じる
「ねぇ、京香」と愛らしい子猫でも呼びかけるように。
「はっ?!わ、わたしは!そういうのはっ!」
へたり込んだ少女が指す「そういうの」がなにかを察して双子はまた声を上げて笑った。
見上げる形になった少女には、怪しげな蛍光色の薬を調合する魔女の高笑いに見えた。
私はそれを無理矢理飲まされる村娘かと。
「あら、京香ったら」
「よく似合ってるわ」
口元を手で隠してくすくす笑う双子の言葉の真意が汲み取れず。
少女の前に突如湧いて出てきたとしか言いようのない姿見が置かれた。
映っているのは間違いなく京香であった。
若緑色のロングドレスの上から革のコルセットが胸元を締めている。
外見を妄想どおりに変わった。昨夜の胸が膨らんだのに比べれば驚きは小さい。くるりと回って太ももの辺りを引っ張ってみたり。
「ちょっと息苦しいかも……。これ、いる?」
原因であるコルセットを外したくとも背中で結ばれていて外せない。
双子に目で訴えても微笑みを返してくれるだけ。
「それじゃあ」
「楽しい時を」
瞬きと間違う一瞬の暗転の後、ヒノコムの世界はアーチ状のコンクリートで造られた薄暗い地下鉄の駅に変わっていた。
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