7 幼なじみと通話しよっ

「ヤベェ、宿題が終わらん。」


悠加と遊んでいるだけの夏休みではない。

いや、そうならばどれだけ楽だっただろうか。


夏休みは至極の快楽を提供するとともに、その反対、くっそ面倒くさい宿題なんてものもついてくるのだ。


「…………めんど。」


俺の予定では開始2週間で終わるはずだったのに、10日経った今で、終わっているのは多めに見積もって三分の一。


「このままじゃ、後半にこの悪魔の書物たちを持ち込むことになる……。」


それはなんとしても避けたい。

最後の方はマジで何もせず、ぐだぐた過ごしたいのだ。


「一人だから、進まないのかなぁ。」


俺はシャーペンをくるくる回しつつ、呟く。

部屋に響くはクーラーの音のみ。

妹ちゃんは今日は部活ではなく、友達と遊ぶらしい。


友達がたくさんいていいですね。

…………羨ましいぜ。


「動画でも見るか。」


開いたPCでレポートは書かず、動画サイトを開く。

まぁ、10分だけ。


 ◇ ◇ ◇


「ヤベェ、気づいたら3時だ。」


見始めたのは、昼ごはんの直後だから、3時間ほど見ていたことになる。


動画の魔力、恐ろしや。


なんか、やってないゲームの解説とか無償に見たくなっちゃうよね。


「誰かとやればいいのか。」


一人でやってたら、サボりたくなっちゃう。

このままじゃ俺の二次関数は解を得られないままだ。


「かと言って出かけるのもめんどいしな……。電話すっか。」


昔と違って、現代にはリモートなんて言う便利ぃなものがあるんだ。

文明の恩恵?受けなきゃ損でしょう。


「誰かいるっかな。」


スマホのメッセージアプリでは少なかった友達も、ビデオ通話なら、その何倍も…………。


「居ねぇよ…。半分以下だよ。」


居ませんでした。

言うのならば、1/3倍です。


泣いていいかな?俺、そんな陰キャじゃなと思うんだけど。


「中山は………今日も部活か。」


中山がだめなら、残るは一人。


テテテ、テテテテ、テレレン♪


軽快な呼び出し音が一人だけのリビングに響く。


『もしもし〜。』


呼び出し音が一周し、二周目に入ろうかという所で、繋がった。


「おお!悠加、出てくれたか!?」


カメラに向けてやっほーと手を振りながら言う。


『なになに、怖いんだけど。切っていい?』


カメラをつけて、すぐにそこから離れる悠加。

俺も、傷つくときは傷つくのよ?


「シンプルに切ろうとするな。まだ始めたばかりだろう。」


『まぁそうか。で、なんでかけてきたん?』


んーと伸びをして、尋ねた悠加。場所は彼女の自室だな。


普通に部屋着だから、やつも今までダラダラしていたと見る。これは、俺と同じで、あんま進んでないんじゃ…。


「いや、一人じゃ勉強できない難病にかかってしまいまして。」


まず、ジャブ程度に軽いボケをかます。


『そう。僕はかかってないから切るね。』


これには悠加も鋭くツッコミを、返してくれる。

うん、ここまでは普通だ。


「何、反抗期なの?いやいや期なの?」


第2ラウンド。かなり強めのボケを出す。これには、さすがの悠加も処理に困るのでは?


『いや3歳児でも中学生でもないから。あと、もし仮にそうだとしても幼馴染にそれ、発動しないから。』


おぉ!ツッコミの二段活用!!

さすが、だてに人生のほぼ大半を一緒に過ごしてきた仲じゃない。


「そっか。で、どこまで進んだ?」


ふふふ、ここまではすべて前振り。

言うならば、披露宴の前座。


俺が真に聞きたかったのは、宿題の進み具合。これ一択。


さぁ、どうする?

お前はどれだけ進んでいるんだ?


『おぉ、話題のハンドルきるのが急だね。免停なっちゃうよ。僕は、丁度半分かな。』


ほら、やっぱ俺よりも進んでな…………い……。

え、半分?こいつ半分つった?


「は?死ねよ。」


ヤベ、あまりの憤りにシンプルに殺害をほのめかしてしまった。

これは訴えられても、文句言えない。


『いや、シンプルに言われると傷つくけど。』


これくらいの軽口は言われなれてるのか、大して気にする様子もなく、そう笑って返す悠加。


取り敢えず訴訟はされなさそうで、良かった。

まぁ、俺が受けたダメージは消えないけど。


「クソぉ!なんでなんだよぉ!!」


同じくらいしか遊んでないはずに、なんでこんなに差が出るんだよ!

答えか?お前答えを見たのか?

それはやっちゃいけないことだろぉ。せめて夏休み終わる一週間前までは耐えろよ!


『あの、真面目に切っていい?』


俺がダンダンと机を叩いていると、悠加は真面目なトーンで言う。


「どうしてだよぉ!!!なんでなんだよぉ!!!キンキンに冷えて…」


だがしかし!俺の落ち込みはそんなのでは止められない!!

このまま落ち続けて、マントルに到達するまであるぞ。


プッ……ツーツーツー……。


「切られた……。」


その後俺はふて寝した。

それでも、宿題は終わりません。


☆今日の 

    言☆

悠加)何だったんだろう?


妹)お兄ちゃん、リビングで寝てたら風邪引くよ。もぅ、タオルくらいかけなよ


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